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「月ぬ走いや、馬ぬ走い(チチヌハイヤ、ウンマヌハイ)」 ★★ 群像新人文学賞 |
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沖縄の現在と、戦中〜戦後の苦難に満ちた過去を、語りをもって描く逸品。 お盆の中日、海に出かけた小学生男子と女子の前に日本兵の幽霊が海から現れ、戦争末期の沖縄を語る。 一方、戦争孤児となり米国兵の戦争花嫁となった祖母が当時を、その孫息子が現在の沖縄の出来事を語る。 それらは整然と語られるのではなく、過去と現在が交錯し混然一体となって語られ、さらに地元の言葉も入り交じり、ワイワイガヤガヤとした空気が充満している、という風。 それだけに日本本土と米国の間に挟まれ、苦渋の歴史を歩んだ沖縄という地の悲しみ、傷がリアルに感じられるようです。 なお、表題の「月ぬ走いや、馬ぬ走い」、どう読むのか、またその意味も分かりませんでしたが、すべて光陰の如く過ぎ去っていく、苦楽も馬さながらに歳月を駆け抜けてしまう、という意味らしい。 しかし、たとえ忘れることはできても、あった事実までを消し去ることはできません。 ズンと胸に響く一冊、お薦めです。 |