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1.永遠の仔 2.悼む人 3.巡礼の家 |
●「永遠の仔」● ★★ |
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1999年06月 2004年10月
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冒頭からその衝撃的な雰囲気に圧倒され、目を背けることが許されないといった、
息苦しい気持ちになります。 読了後、こんな結末で良いのだろうか、と思いました。不公平ではないか、と。ミステリと思えば解明された真相がすべてなのでしょうが、本書の場合には結末にこだわるべきではないのでしょう。事件の真相より、この物語の渦中において、どれだけ3人が苦しんでいたか、ということが重要なのですから。 |
●「悼む人」● ★★☆ 直木賞 |
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2011年05月
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縁も所縁もない死者を悼むため全国を巡る旅を続ける青年。そんな彼の行動に不審を抱かない人はいないでしょうし、関わると危ないのではないかと、きっと思う筈。 冒頭からすぐ、本ストーリィに深く惹き付けられます。それは静人の行動に対する不可解さに加え、彼に関わった人たちの濃い人間ドラマが描かれているから。 “悼む人”の是非はともかくとして、読者の胸に強く訴えかけ、生きるとはどういうことか、生きた証しとは何なのかと、強く考えさせられるストーリィ。長篇小説としての読み応え、魅力もたっぷりです。 |
3. | |
「巡礼の家」 ★★☆ |
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道後温泉にあるお遍路宿<さぎのや>を舞台にした、温もりに満ちたストーリィ。 人を殺してしまった・・・怖くなって逃げ出してきた雛歩・15歳は、たった一人で山の中へと分け入りますが、ついに力尽きて倒れてしまう。 その時、白い鳥のように見えた女性が現れ、雛歩に「あなたには帰る場所がありますか」と問い掛けてきます。僅かに首を振っただけで雛歩はそのまま意識を失ってしまう。 雛歩が目を覚ました時、そこには傷ついた雛歩を労わり、世話をしようとする何人もの人がいた。 そこは、心が傷つき、帰る場所を失った人たちを迎え入れ、労り世話するための宿、三千年も続くという<さぎのや>。 そして雛歩を助けてこの宿に連れ帰ったのは、その女将だった。 さぎのやの人たち、その周辺にいる人たち、皆が皆、さぎのやの精神を大事にし、困った人たちに笑顔で、そして喜んで手を差し伸べようとしています。 その温もりがとても大切で有難く、人々の繋がりがとても羨ましい、まるで桃源郷のように思えてしまう程。 しかし、それは「さぎのやの普通」であっても「一般社会の普通」とはまるで異なるとは、登場人物の一人が雛歩に語ったことです。 それはそうでしょう。だからこそ本物語が貴重に思えるのです。 さぎのやの人々に囲まれて、雛歩が少しずつ前に進み、新たな自分を見つけようとするまでのストーリィ。 雛歩の物語であると同時に、<さぎのや>という存在を描く物語でもあります。 雛歩と女将である鷺野美燈の2人が中心のようですが、私としては雛歩と大女将であるまひわのやり取りに魅力を感じます。 本ストーリィを味わうだけでも楽しいのですが、その後にどのような展開があるのか、それを想像するのもまた楽しい。 |