高杉 良作品のページ


1939年東京都生。化学専門紙記者、編集長を経て、75年「虚構の城」にて作家デビュー。以降経済界に題材をとった作品を数多く発表。


1.小説 ザ・外資

2.不撓不屈


※【既読の高杉良作品】
小説日本興業銀行第1〜5部/なみだ壺/大逆転!/大合併 小説第一勧業銀行/小説巨大証券/小説会社再建/濁流/燃ゆるとき/いのちの風/男の決断/辞令

  


    

1.

●「小説 ザ・外資」● 

   
小説ザ・外資画像

  
2002年03月
光文社刊

(1700円+税)

 

2002/08/16

最初読む気がなかった本書を結局読んだのは、破綻した日本長期信用銀行(長銀)を経緯を描いた作品だと知ったからです。しかし、私の思いは見当はずれだったようです。その意味でちょっと期待はずれ。
本書は、小説とはいっても主人公を描くストーリィではなく、投資銀行の実態を小説の形を借りて時事解説するかのように描いた作品と言うべきでしょう。

長銀行員でMOF担だった西田健雄は、ノーパンしゃぶしゃぶ等の接待からみで妻から離婚され、それを転機にアメリカの投資銀行に転職した人物。
彼を主人公=案内役にして、前半は投資銀行の実態、すなわち実績を上げるためには人を蹴落とし、アイデアを横取りしてもなんと思わない、という様が描かれます。その後西田がスカウトされて転職したマイナーの証券会社は、違法的な営業活動を行っており、前者以上。それは、決して、西田のいた投資銀行だけが例外だったわけではないことが物語られています。
後半は、西田と、破綻した長銀に留まって奮闘する友人との語らいから、外資にいいように巨利をむさぼられた長銀、そして日本経済の実態が描かれます。
まさに、外資系ビジネスの節操のなさ、それに対し、日本の余りの甘さ、稚拙さ、と言うほかありません。

     

2.

●「不撓不屈」● ★★

 
不撓不屈画像
 
2002年06月
新潮社刊

(1700円+税)

2006年02月
新潮文庫化
(上下)

2013年05月
角川文庫化

    

2002/07/12

 

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昭和30〜40年代、国税庁・検察庁という強大な国家権力による脅迫・弾圧に屈せず、最後まで闘い続けた税理士がいた。国会においても、その弾圧的な調査ぶりが問題指摘された、“飯塚事件”の一切を描いた実録小説。

飯塚会計事務所の所長・飯塚毅は、税務署の課税指摘について国税庁官僚の誤りを堂々と論駁し正したことから、その個人的恨みを買ってしまいます。その結果、飯塚氏は、国税庁、さらには検察庁という国家権力を象徴するような強大官庁から、長期間にわたる徹底した脅迫、弾圧を受けます。
常人ならとても耐えられそうにないその弾圧に、最後まで闘いぬいた飯塚氏には、感嘆する他ありません。
しかし、それ以上に感じることは、国家権力の恐ろしさです。
特に、恥をかかされたという個人的な恨みが、そのまま一個人への国家権力行使に繋がってしまうというそのことが、何より恐ろしい。
飯塚氏やその所員に対する執拗な弾圧は、もう呆然とする程です。そして読者とはいえ、そのあまりの横暴さには、怒りがこみ上げて来ます。
なお、飯塚氏曰く、日本の税法には粗雑なところがあって、官僚の解釈次第で適用状況が左右されてしまうことが多い。一方、諸外国ではきめ細かく規定されていて、官僚の解釈次第などということはない、とのこと。また、国家権力を制限すべく法律があるべきであるのに対し、日本では国家権力を振りかざすのに便利であるようにわざと粗雑になっている傾向があると言います。

これは、決して過去のことではありません。今般の郵便改正法案においても、「信書」の解釈が官僚次第になっているとの指摘があり、上記の構図は少しも変わっていないのです。
そうした実態を知る意味で、本書は読む価値があります。
また、それを抜きにしても、スリリングなストーリィ展開にぐいぐい惹き込まれてしまう面白さです。
とくに、国会で社会党議員、渡辺美智雄自民党議員が、国税庁長官を質問で追いつめていく場面は圧巻!

    


  

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