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「白鷺(はくろ)立つ」 ★★ 松本清張賞 |
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時代及び舞台は、江戸後期、比叡山延暦寺(天台宗)。 そこで行われていた回峰行の中で、特別に過酷と言うべきであるのが、<千日回峰行>。 単に過酷であるだけでなく、行満できなかった場合には自害することになっている、というのですから。 冒頭、主人公である恃照が、その千日回峰行に挑んでいます。 5年700日の回峰行を終え、最も過酷な<堂入り>の最終日、しかしその途中、恃照の足がぐらつく・・・。 失敗すれば自害するのが千日回峰行の定めである一方、比叡山には恃照を死なせるわけにはいかないという秘密があった。 恃照と同じ秘密を抱える若い僧が戒閻。 この戒閻、恃照が住持を勤める玉照院に付属させられ、恃照の弟子という立場に。しかし、ことごとく恃照に反抗的な態度をとるばかりか、千日回峰行を行満し“大阿闍梨”となり、自分の存在を広く知らしめるという立身欲を露わにします。 千日回峰行にまつわる二人の僧、恃照と戒閻の相克はいったいどのような展開を見せるのか。 この二人のぶつかり合いが、本当に凄まじい。迫力、緊迫感、重圧感と、これがデビュー作とは信じられないくらい。 そして戒閻の口の利き方が、何と憎らしく、如何に人の心を抉ってくるものであることか。 最後の最後まで、少しも息をつかせず、かつどういう結末になるのか全く予想もつかず。 この迫真性は、必死のサスペンスさながらです。 ただし、千日回峰行も結局は昇進、名を残すためのものかと思えてしまい、感動を覚えるには至らず。 ※なお、作中に登場する憲雄、聖諦、真超という大阿闍梨は、実在の大行満のようです。 序/妙案/蠢動/血縁/傑僧/感得/発願/出峰/点睛/結 |