ドリアン助川作品のページ


1962年東京都生、詩人、作家、歌手。早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒、日本菓子専門学校通信教育課程卒。放送作家等を経て90年にバンド「叫ぶ詩人の会」を結成、詩の朗読とパンクロックを組み合わせたパフォーマンスが話題となる。95年から2000年まで全国ネットのラジオ深夜放送のパーソナリティを務め、中高生を中心に人気を博す。明川哲也あるいはドリアン助川の筆名での著書多数。2024年現在明治学院大学国際学部教授。


1.あん 

2.太陽を掘り起こせ 

  


     

1.
「あ ん ★☆


あん画像

2013年02月
ポプラ社

(1500円+税)

2015年04月
ポプラ文庫



2013/03/03



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他にできる仕事もなく、亡くなった先代から引き継いでどら焼き屋を営んでいる千太郎
どら焼きの皮は自分で焼いているものの、餡は業務用のものを仕入れてそのまま使っている。したがってそれ程人気がある訳でもないが、それなりに商売を続けられているという状況。

そんな千太郎の前にある日、時給はいくら安くてもいいから働かせて欲しいとやってきた老女、吉井徳江76歳
彼女の変形した指をみて食べ物や向きではないといったん断ったものの、彼女はいつの間にか店に入り込み、いつしか餡作りに精を出していた。
ずっと作ってきて50年というその吉井の作る餡は、業務用とは全く違ってとても美味しかった。
吉井の作る餡の評判が良く売り上げは急速に伸びて行ったものの、おかげで千太郎は朝早くから懸命に働くこととなり、果たして喜ぶべきことだったのかどうか。

実は千太郎、どら焼き屋を続けているのにはある事情があったのですが、吉井徳江には千太郎以上の秘密があったと判ります。
千太郎の他、吉井に相談事をしていた女子高校生の
ワカナちゃんがその秘密を知ることになりますが、それは何と過酷で悲しい運命だったことか。
人に喜んでもらえることをしたいと願っていた吉井徳江、それなのに彼女にとってそれはずっと許されないことだった。

どら焼き屋を皮切りに、過去の日本で過酷な運命に耐えてきた人々を、吉井徳江という老女の姿を通じて描いたストーリィ。
和菓子をモチーフにした心温まるストーリィかと思っていましたが、実は本書、社会的な小説だったという次第。

       

2.
「太陽を掘り起こせ DIG OUT THE SUN ★☆   


太陽を掘り起こせ

2024年03月
ポプラ社

(1900円+税)

2024/04/06

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ある日、太陽が消えた。
徳丸芳枝は70歳。一人息子の健太郎が一ヵ月前に死去し、営んでいた喫茶店も閉じた状態。
そんなとき、一人の
男の子が店を訪れてきます。
その子は、太陽が消えたから、太陽を探しにいくのだという。
芳枝は家を出て、男の子の後をついていく・・・。

芳枝は歩いていく中で、書き物をしていた「
」と名乗る男性と行動を共にし、幼い頃の友人だったのではないかと思える女性と出会うかと思えば、いきなり戦場に入り込み、そこを逃れると子どもの姿になった両親と再会する・・・。

かなり比喩的なストーリーという印象です。
芳枝が出会う問題ごとは、そのまま現代の闇とも思えますし、多くの子供たちが太陽を目指して進んでいくという内容は、子どもたちへ希望を託しているように感じられます。
では、大人は何をしたらいいのか? 
最後に芳枝が決意すること、それが結論なのではないか。

     


  

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