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1.地べたを旅立つ 2.臼月トウコは援護りたい |
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「地べたを旅立つ−掃除機探偵の推理と冒険−」 ★★☆ アガサ・クリスティー賞大賞 Depart from The ground:The mystery and adventures of a vacum cleaner detective |
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2022年05月
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これはもう、楽しい! 主人公の意識が掃除機に転移するという奇想が抜群! 主人公は鈴木勢太・33歳、札幌方面西方警察署刑事課勤務の巡査部長。独身ですが、亡姉の忘れ形見である小五の朱麗(シュリ)と二人暮らし。 その勢太、高齢者の暴走自動車にはねられ意識が失いますが、意識が戻ると我が身は何と最新のロボット掃除機に。 カフカの名作「変身」に勝るとも劣らぬ変化なのですが、そのうえ隣室には中年男性の遺体が・・・。 勢太が真っ先に危惧したのは、シュリのこと。亡姉=深春の再婚相手である加治野の本性はDV男。離婚、加治野も傷害罪で逮捕され執行猶予付き判決、接近禁止令となったものの、勢太の不在をかぎつけてシュリに魔手を伸ばしてくる恐れ大。 何とかシュリを守ろうと、勢太はロボット掃除機の身で札幌から小樽へと出発します。最大時速1.8km で。 IT機能のあるロボット掃除機にいったい何が出来るのか? そこが興味尽きない処です。 殺人事件の捜査というミステリ要素、ロード・ノベルという冒険要素、そして最後は、シュリを守るための大立ち回り?という活劇要素と、面白さ要素がふんだんに盛り込まれています。 そのどれもにおいて、ロボット掃除機に出来ることは・・・という工夫が凝らされているのですから、面白いこと限りなし。 勢太と小五の姪=朱麗とのやり取りも楽しいのですが、掃除機の勢太とロードの途中で出会った老夫婦との関わりも楽しい。 快作、と言って間違いありません! |
2. | |
「臼月トウコは援護(まも)りたい」 ★☆ |
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題名、「臼月トウコを」ではなく何で「臼月トウコは」なの?と思ったのですが、そうかァ、そういうことか。 それが分かると思わず笑いだしたくなった、という次第。 本作はコミカルな連作ミステリです。 4つの殺人事件、いずれも犯人側と捜査側の笠置巡査部長の2人がいろいろやりとりを重ねるというパターンで、さながら「刑事コロンボ」的展開、倒叙推理型と言って良いでしょう。 (以下ネタバレ的ですので、ご注意ください) 犯人側が巧妙に仕組んだアリバイ、誰が、如何に崩すのか。 その者が笠置刑事ではない、という処が本作の妙。 2人のやりとりに割り込んでくるのが、犯人側に新しく雇われたばかりの、ドジできちんとした言葉遣いもできず周囲を呆れさせている女性。そう、その人物こそが臼月トウコなのです。 勝手に口を挟んでは笠置刑事の疑心を高め、雇用主を援護しようとして「犯人じゃない、です」「証明できる、です」と明言しては結果的に折角のアリバイを崩してしまう、というパターン。 最後に犯人、なんでこんな人間を雇ってしまったのか、と毎回悔やむ様子が愉快この上ない。 さて、実際にどんな犯罪、アリバイ崩しが繰り広げられるのか。それは読んでのお楽しみです。 序詞−5つ目の車輪−一月/1.ゲームの裏の冷徹−臼月トウコの援護−二月/2.偶然の事情−臼月トウコの擁護−六月/3.阿迦奢(アーカーシャ)に旅立つ−臼月トウコの弁護−八月/4.白い誤謬−臼月トウコの掩護−九月/終詞−屋上の星−十月 |