笙野頼子作品のページ


1956年三重県生、立命館大学法学部卒。81年「極楽」にて群像新人文学賞、91年「なにもしてない」にて野間文芸新人賞、94年「ニ百回忌」にて三島由紀夫賞、「タイムスリップ・コンビナート」にて芥川賞、2001年「幽界森娘異聞」にて泉鏡花賞を受賞。

 
1.
片付けない作家と西の天狗

2.だいにっほん、ろんちくおげれつ記

 


   

1.

●「片付けない作家と西の天狗」● 




2004年06月
河出書房新社

(1600円+税)

 

2004/11/02

エッセイなのか短篇小説なのか、よく判らないままに読み出しました。途中からこれは小説と理解したものの、よく判らないまま呆然と立ちすくんでいた、というのが正直なところ。

東京のマンションを引き払い、捨て猫数匹とともに千葉県S倉の一軒家に移り住んだ女性作家が主人公。つまり、笙野さん自身とこの辺りは重なっている訳です。しかし、内容はすぐ現実と遊離していきます。
どこまでが事実なのか創作なのか。といって小さな天狗が登場したりするのは小説事に間違いないし。現実に妄想が入り込むうえに、笙野さん自身の憤懣も織り込まれているようで、何やら得たいの知れない世界に引込まれているのです。
最初から小説の世界と判っている内田百「冥途」などとは、また違った風味。
なお、長年の編集者と某評論家とのいざこざは、最も興味を引かれる部分です。
あくの強さにそれなりに惹きつけられつつも、笙野さんの繰り広げる世界に結局はついていけないまま読了。

胸の上の前世/S倉極楽図書館/素数長歌と空/五十円食堂と黒い翼/箱のような道/猫々妄者と怪/越乃寒梅泥棒/雑司が谷の「通り悪魔」/片付けない作家と西の天狗/後書き・モイラの事

  

2.

●「だいにっほん、ろんちくおげれつ記」● 




2007年10月
講談社刊

(1600円+税)

 

2007/11/23

 

amazon.co.jp

「だいにっほん、おんたこめいわく史」に続く第2弾。

しかし、なんとまぁ・・・・・。
主人公である語り手の埴輪いぶきは死者だそうな。舞台となるS倉市では午前1時ともなると死者が多く集う。死者によっては生きている人間と話を交わすこともできるという。
そんないぶきが語る本書の中で繰り広げられる世界は、いったい何なのであろうか? そしてまた「おたんこ」とは何なのか??

ろんちく=「論畜」とのこと。日本が滅亡して「にっほん」へ変容し、贋の左派論客が大勢を占める社会。反権力を自称する者たちを差して「おたんこ」というのか。
ロリコン、火星人、美少女、遊郭。そのうえ「天王星下」なる言葉も飛び出し、これは天皇制を基軸とする日本国の社会体制への揶揄を含むのか。あぁ、判らない・・・・。

率直に言って、理解が追いつけぬまま、ただただ圧倒されていたというに尽きます。
あるいは「おんたこめいわく史」から読み始めていれば、もう少し内容についていけたのだろうか。その意味で、前作を飛ばして本書を読んだのは誤りだったのかもしれない。

※本書は三部作の2番目。
1.「だいにっほん、おんたこめいわく史」
2.「だいにっほん、ろんちくおげれつ記」(本書)
3.「だいにっほん、ろりりべ死んでけ録」

だいにっほん、ろんちくおげれつ記/ひとりで国家と戦う君だけに愛を

  


   

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