塩田武士
作品のページ


1979年兵庫県生、関西学院大学卒。神戸新聞社在籍中の2010年「盤上のアルファ」にて第5回小説現代長編新人賞ならびに11年第23回将棋ペンクラブ大賞、16年「罪の声」にて第7回山田風太郎賞、19年「歪んだ波紋」にて第40回吉川英治文学新人賞、24年「存在のすべてを」にて第9回渡辺淳一文学賞を受賞。

  


       

「存在のすべてを ★★☆   




2023年09月
朝日新聞出版
(1900円+税)



2024/09/26



amazon.co.jp

ふと犯罪捜査ものミステリを読みたいなという気持ちになり、2024年本屋大賞3位だった本作品を手に取った次第です。

1991年、神奈川県で<二児童子誘拐事件>が発生。
誘拐された小六児童は川崎市内の倉庫で発見され、保護されたものの、4歳児の
内藤亮については身代金の受渡が実現せず、事件は進展しないままとなってしまう。
その3年後、祖父母の家を7歳になった亮が一人で訪ねてきて、亮は無事に保護されます。しかし、空白の3年間、誘拐事件の裏には何があったのか。誘拐事件の真相はついに不明のまま、事件は迷宮入りしてしまいます。
ただ、亮の祖母曰く、その3年の間に亮はきちんと躾けられていたという。

事件から30年後、当時捜査員の一人で懇意だった中澤元刑事の葬儀に参列した
大日新聞の門田次郎は、写真週刊誌のスクープ記事により今人気を博している写実画家=如月脩が、あの内藤亮だと知ります。
そこから門田は中澤の遺志を継ぎ、誘拐事件の真相を一人で調べ始めます。

誘拐事件の謎、写実絵画の魅力、絵画業界の泥臭さ、高校時代の淡い恋、地道な捜査と、様々に読み手を惹きつける要素を散りばめながら、究極的には“親子”を鍵としたストーリー。
親、子、それぞれ先行きに希望が持てない状況にあるだけに、双方が寄り添う姿は切なく、同時に愛おしいものがあります。

読み応えたっぷりにして、感動も深い佳作です。


序章.誘拐/1.暴露/2.接点/3.目的/4.追跡/5.交点/6.住処/7.画壇/8.逃亡/9.空白/終章.再会

           


  

to Top Page     to 国内作家 Index