柴田よしき作品のページ No.2



11.風のベーコンサンド−高原カフェ日誌−

12.さまよえる古道具屋の物語

13.ねこ町駅前商店街日々便り

14.草原のコック・オー・ヴァン
−高原カフェ日誌U−

【作家歴】、RIKO−女神の永遠−、聖母の深き淵、月神の浅き夢、ワーキングガール・ウォーズ、窓際の死神、所轄刑事・麻生龍太郎、小袖日記、朝顔はまだ咲かない、やってられない月曜日、いつか響く足音

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11.

「風のベーコンサンド−高原カフェ日誌−Cafe"Son de vent"Diary season1★★☆


風のベーコンサンド


2014年12月
文芸春秋
(1500円+税)

2018年04月
文春文庫化



2015/01/02



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夫のモラハラにより自律神経失調症に陥った奈穂が、副編集長として働いていた女性誌編集部を退社し、人生をリセットするために選んだ場所が、本書の舞台となる百合が原高原
バブルのペンションブームが去って相次いで廃業したペンションのひとつを買い取り、奈穂はこの地で一人、一軒家カフェ
“ソン・デュ・ヴァン”を開業します。

素人から始めたカフェ、ペンションブームが去り村営スキー場も廃止された状況下で、果たして収支がとれるのやら。
それでも奈穂は、地元の人や観光客に、地元で採れた美味しい食材を使った優しい料理、居心地の良い場所を提供したいと、ここ百合が原高原に開いた自分の店で日々を過ごしていく。
そしてそんな奈穂の店を訪れる人たちは束の間、自分たちの悩みや葛藤といった人生の一片を残していく、という趣向からなる連作ストーリィ。

美味しい料理にささやかな人生ドラマという組み合わせからは、小川糸「食堂かたつむり」を思い出しますが、本書全篇を通して常に感じられる百合が原高原から吹いてくる風が、何処までも清々しく、何とも爽快な読み心地です。
それに加えて、地元の野菜、地元牧場が作るバターやベーコンを使って奈穂が作り上げる料理の何と美味しそうなことか。
これらの素材を使って見事に作り上げた本作品の繊細な味わいには、さすがベテラン作家ならではのものと、感嘆するばかり。
優しく爽やかな味わいの作品がお好きな方に、是非お薦め!

「風音」:作業服の客=田中さんとの出会い。
「夕立」:離婚に応じない夫=滋の突然の来店。
「豊饒」:農家のお嫁さんが胸の内に秘めていた葛藤。
「夢鬼」:ベーカリーを営む夫妻の葛藤、そして滋の本心。
「融雪」:美人経済評論家が抱えていた悔恨。
「花歌」:エピローグ的。開店一周年を迎えた奈穂の状況。

風音/夕立/豊饒/夢鬼/融雪/花歌

                  

12.

「さまよえる古道具屋の物語 ★★☆


さまよえる古道具屋の物語

2016年12月
新潮社刊

(1600円+税)



2017/01/17



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ふと気付くと、そこになかった筈の古道具屋が目に入ります。
誘われるように店に入ってしまうと、そこには男女どちらとも決めかねるハットリくんに似た風貌の店主と極め付けに居心地の良い椅子が待ち受けています。
その挙句、訳の分からぬガラクタ同然の品物を、その時財布に入っている有り金ちょうどの金額で買い取らされてしまう。
その不気味な店主の正体は? そして、買った品物は彼らに幸せをもたらすのか、それとも不幸をもたらすのか・・・・。

古道具屋をモチーフにした連作短編集というと、さも心温まるストーリィかと思うのですが、本書は然に非ず。
凝りに凝った、複雑に糸を張り巡らせた、サスペンスフルでミステリアスで、そしてハートフルな物語。
それが各篇ストーリィ毎に色を変え、趣向を変えて目の前に繰り広げられます。
何という複雑怪奇でファンタジーな連作短篇なのでしょうか。

本作品だけは、その読後感を言葉で語ることはとうてい無理。自身で読んでもらう他ありません。
でも本好きならきっと、本作の企みの複雑さ、深さ、巧みさ、何とも言えぬ読後感に陶然となるのではないでしょうか。
これはもう、ベテランのミステリ作家だからこそなせる技、と思うばかりです。


・作家志望の貧乏青年が買ったのは、文章と絵がさかさまになっている絵本。
・詐欺に遭って借金を抱えてしまったOLが買ったのは、穴のない豚の貯金箱。
・作家デビューした新人作家が買ったのは、ポケットに穴の開いているエプロン。
・不倫妻が買ったのは、取っ手のないコークス用バケツ。
・癌宣告で落ち込んだ女性が買ったのは、ビリヤードの玉。

1.さかさまの物語/2.金色の豚/3.底のないポケット/4.持てないバケツ/5.集合/6.幸福への旅立ち/そして、プロローグ

          

13.

「ねこ町駅前商店街日々便り ★★☆


ねこ町駅前商店街日々便り

2017年11月
祥伝社刊

(1850円+税)



2017/12/09



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一時期は猫の町として評判になった根古万知(ねこまんち)町ですが、寂れる一方の町、シャッター商店街は如何ともしがたく、同町を終点駅とする柴山電鉄の廃線も避けられない所。

そんな故郷の根古町に離婚して戻ってきた
島崎愛美の前にふと現れた一匹の愛らしい猫(ノンちゃん)が、町の活性化に向けたきっかけとなります。
町民たち大勢から可愛いと大評判、SNSにも広がり、根古万知駅の駅長に就任。しかし、折角遠方から根古万知駅まで人が来てくれても、他に見てもらえる場所も時間を潰す場所もないどころか、飲食する場所さえ2店舗しかない。
故郷の町を何とかできないかと考え始めた愛美、その気持ちに賛同する喫茶店経営の
藤谷信平、カメラマンの香田慎一らも協力して、少しずつ動きが生まれていきます。

奇しくも、読んだばかりの
山内マリコ「メガネと放蕩娘と同じシャッター商店街、我が町の再生ストーリィ。
しかし、シャッター商店街の再生というのは基本的に難しいようです。「メガネ」でも描かれていましたが、人口が減り大型ショッピングセンター等が便利になり、自分たちの子供が店を継ぐということがなければ、店を閉めて静かに老いていきたい、という気持ちは至極もっともだからです。
そこにどう活力を導入するかということが「メガネ」でも課題でしたし、本ストーリィでも同様。そこで愛美が考え出したのは、ここで生まれ育った子供たちに楽しかったという思い出をもって欲しいからと、〇〇〇という発想。

ベテラン作家である柴田さんだけに、様々な角度から、多くの人の人生、思い、考え方が織り込まれています。
したがって、町・村再生ストーリィの多くが軽快さを持っているのとちょっと異なり、重厚ささえ感じるストーリィになっています。
軽さを感じる題名ですが、内容は盛り沢山、読み応えたっぷり。お薦めです。


1.駅長登場/2.ねこ町の復活/3.UFOの丘/4.シャッター展覧会/5.女優参上/6.ねこまち文化祭/7.恥ずかしい過去/8.こねこのロンド/9.さすらうひと/10.祭りは続く/11.新しい朝に/終章.終わりよければ

                        

14.
「草原のコック・オー・ヴァン−高原カフェ日誌U− ★★☆


草原のコック・オー・ヴァン

2018年09月
文芸春秋刊

(1850円+税)



2018/10/22



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「風のベーコンサンド」に続く、シリーズ第2弾。
シリーズ化を全く期待していなかったのですが、考えてみれば当然のことだったかも。
いずれにせよ、シリーズの続編はとても嬉しい。

何と言っても本作の魅力は、高原を吹きわたる風のような気持ち良さ。
そしてそれと同じくらい楽しいのは、
百合が原高原で一軒家カフェ“ソン・デュ・ヴァン”を営む主人公の奈穂と、彼女を取り巻く地元人々との関わり、その様子。
といっても、地元民の人々みなが奈穂に好意的、という訳ではありません。詮索好き、噂好きという厄介な面もあれば、その偏見からも免れません。
しかし、奈穂に好意を持つ
<ひよこ牧場>の工藤南や、恋人となった村岡涼介らに支えられながら、自分らしい道を歩もうと日々努力を続けている。そんな地道なひたむきさ、前向きな姿勢にとても惹かれます。

今回、新しく登場するのは、百合が原高原でワインを作りたいとたった一人でやってきた
森野大地
その大地、人気のあったロックバンド“ストレート・ファン”のギタリスト。その彼が何故百合が原高原に?という点も、本巻での大きな興味どころです。
※なお、「コック・オー・ヴァン」とは鶏の赤ワイン煮のこと。
 
「荒野」:森野大地がワイン作りのため第一歩。
「宴」 :奈穂の新たな商売ネタ、大地との出会い。
「東京」:久しぶりの東京で奈穂が会ったのは2人の人物。
「新年」:おせち料理代わりの洋風オードブルに挑戦。
「挫折」:村岡涼介、森野大地、それぞれの挫折。
「草原の輝き」:大地が抱えていた秘密、自責・・・。
「エピローグ」:奈穂の新たな一歩。

荒野/宴/東京/新年/挫折/草原の輝き/エピローグ

        

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