桜井真城(まき)作品のページ


1979年岩手県生、明治大学法学部卒。会社員生活の傍ら小説を書き始める。出産・育児のため一時中断していた執筆を久しぶりに再開して書き上げた「雪渡の黒つぐみ」にて2024年第18回小説現代長編新人賞を受賞し作家デビュー。


 


                    

「雪渡(ゆきわたり)の黒つぐみ ★☆       小説現代長編新人賞


雪渡の黒つぐみ

2024年07月
講談社

(1800円+税)



2024/07/30



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小説現代長編新人賞を受賞した、忍びもの時代小説、ということで興味を惹かれ読んでみた次第です。

本作の特徴は、
一つに、主人公である
南部藩お抱えの忍び<間盗役>の一番衆だという望月景信(17歳)が、これ以上ないというくらい、忍びらしくない忍びであるということ。
もう一つは、舞台が東北の南部藩領という僻地であり、極めてローカル色の強いストーリーとなっていること。

景信、相手が敵方の忍びだろうと、関係のない村娘だろうと、やたら女子に甘く同情してしまうのが常。そんなことで忍びの役を果たせるのかと、読みながら懸念してしまう程。
また、口の悪い上司とのやりとりは方言丸出しで、緊迫感のないことこの上ない。
中央での戦さに縁のなかった地方の忍びとは、こんなにものんびりしてしまうものかと、ついつい感じてしまいます。
なお、その景信のもつ秘技は、“
声色(声真似)”と、これまた大人しいもの。

さて、肝心のストーリーは、南部藩内に<
伴天連教>の伝道師や信徒が集まっており、その一方で<大眼宗>という謎の宗教集団も入り込んでいるらしい。
その裏に、
仙台藩・伊達政宗の画策があるのではないか、というのが南部藩の懸念。
実際、景信の戦いは、仙台藩の忍び<
黒脛巾組>を相手に繰り広げられることになります。

予想と異なる趣のストーリーに困惑する思いでしたが、東北地方ではこうした歴史や戦いもあったのだと思うと、興味深い。
ローカル色の濃い処が、本作の読み処と感じます。


プロローグ.神の眼/1.七色の声、枯山を越える/2.北辺の韋駄天、雪原を渡る/3.紺碧の天女、疾風に舞う

       


   

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