連城三紀彦作品のページ


1948年愛知県名古屋市生、早稲田大学政治経済学部卒。81年「戻り川心中」にて日本推理作家協会短編賞、84年「恋文」にて第91回直木賞を受賞。2013年10月死去。

 


 

「どこまでも殺されて」● ★★

 

1990年
双葉社刊

1995年8月
新潮文庫

 

1997/01/03

「どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる」
7度も殺され、今まさに8度目に殺されようとしている、という謎の手記。そして、高校教師・横田勝彦の元に、男子生徒から「僕は殺されようとしています。助けて下さい」という必死のメッセージが届きます。
7度も殺されるとは? 助けを求めつつ正体を隠そうとするのは何故? 彼は本当に実在するのか? 
謎がどんどん膨らむ感じで、どこへ到達しようとするのか、皆目見当もつかないという作品です。

最終近くに第一段階の謎が明らかにされ、何だそういうことかと思うのですが、それからの真相解明にまた深いドラマがあって、もう唖然とするばかり。
読む側の意表を完璧につくというテクニックが恐ろしい程滑らかで、完全に連城さんの術中に嵌ってしまいました。そして教師の横田。ホームズ役かと思っていたら、実はワトスン役で、そうと気付いた時はもう最終場面。これも意表をつかれた点です。
ストーリイ展開のこうした巧さが、恋愛における男女の微妙な心理描写を可能にしているとすれば、連城さんの恋愛小説への転身が納得いくというものです。
結末が全く読めない分、読み応えと面白さがたっぷりありました。再度読み直すと、いろいろな点が腑に落ちる。2度読みがまた楽しめる、という学園サスペンスです。

 


 

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