尾崎英子
作品のページ


1978年大阪府生、早稲田大学教育学部国語国文科卒。2013年「小さいおじさん」にて第15回ボイルドエッグズ新人賞を受賞し作家デビュー。


1.小さいおじさん

2.有村家のその日まで

 


           

1.

「小さいおじさん ★★        ボイルドエッグズ新人賞


小さいおじさん画像

2013年10月
文芸春秋刊
(1600円+税)



2013/11/18



amazon.co.jp

中学2年の時に同級生だった女性3人の、28歳の今を描いた長編ストーリィ。
同級生といっても3人が親しい間柄だった訳ではありませんが、名前と顔は勿論覚えているし、地元を歩けばすれ違うことも出会うこともある、という近くもなく遠くもないという三者三様の距離感が絶妙、なおのことリアルに感じられます。

成績優秀だった曜子は今、設計士として仕事に手応えを感じているが、母親の最近の行動について心配を抱えている。
地味で目立たない存在だった
紀子は、幼い娘を持った平凡な専業主婦。とはいえ内心にかなり大きな悩みを抱えている。
人気者だった
朋美は、現在仕事を辞め実家で何もせず過ごしている。それはある出来事を今も心に引き摺っている為。
本書は、そんな3人が入れ替わり第一人称で語るところから成るストーリィ。

中学時代にクラスで花形だった女子も、社会に出て28歳にもなれば各々それなりに苦労、悩みも抱えているという姿が明瞭です。学校という閉ざされた世界と現実社会の違いと言ってしまえば簡単ですが、28歳という一つの曲がり角を迎えた女性たちが各々葛藤を抱えているという光景は理解できる気がします。
ちょうど仕事、結婚という問題にどう向き合うかという時期でしょうし、曜子のように親の問題を抱えることもあるでしょう。
作者の尾崎さんは、この年代だからこその心象風景を描き留めてみたかったそうです。

表題の“小さいおじさん”とは、地元の音無神社で目撃された、という謎の存在のこと。実在するのかどうかは別として、自分以外の者にちょっと後押しされた、という気持ちで一歩踏み出してみるのも良いのではないかなァと思った次第です。

                     

2.
「有村家のその日まで ★★


有村家のその日まで

2018年11月
光文社刊

(1700円+税)



2019/01/04



amazon.co.jp

実家で父親と2人暮らしの母親が、末期がんであることが子供たちに知らされます。余命はもっても1年程とのこと。
それから母親が死すまでの
有村家の姿を描いた家族物語。

死因の多くが癌という現在、いつ何時、どの家庭に起きても不思議ない出来事。
ただし、本ストーリィでの
母親=仁子が個性的、いや独創的。
医師の勧める治療方法、ケアを拒否し、サプリや怪しげな気功を信じて病気が治ると信じて疑わない。
おかげで父親や子供たちは振り回されてばかり。
父親=照夫は、仁子の浪費癖の酷さに一度は離婚した程。何を言ってもきかないと、老後の蓄えが減るのを恐れつつ諦め顔。
・在宅診療所を営んでいる
長女=美香子は、娘であると同時に医師として仁子に向かい合うことに。
・独身でイラストレーターの
次女=文子・39歳は、母親の状況を心配しつつ、マンション隣室に住む、1年前に突然母親を亡くした少女あおい・5歳のシッターを引き受けているところ。
長男=優は2人の妹と違って母親に強く出られない性格。その分夫に代わってと、嫁=真弓が何とか仁子の浪費を止めさせようとあれこれ思案。

どう向き合えば良いのか、どう対処すればいいのか。それは本人の考え方次第もありますし、遺される家族の思いも当然あるでしょう。
本作では、仁子のキャラクターが際立っているが故に、その辺りの問題や苦労が明瞭に浮かび上がっている、という印象です。
ただ、何を言っても聞かない、非常識な考えに凝り固まっているという状況だと、家族としては参るだろうなぁ。
(病人だからなおさら、ということなのかもしれませんが。)

身近な問題についていろいろと考えさせられる、重たくもあり、コミカルでもある家族ストーリィ。
お薦めです。


一月/三月/五月/七月/八月/九月/亡き後

        


   

to Top Page     to 国内作家 Index