小野美由紀作品のページ


1985年東京都生、慶応義塾大学文学部仏文学専攻卒。2011年、震災を描いた絵本「ひかりのひりゅう」発売のためクラウドファンディングを立ち上げ、14年に出版。「メゾン刻の湯」にて小説デビュー。

 


                   

「メゾン刻(とき)の湯」 ★★


メゾン刻の湯

2018年02月
ポプラ社刊

(1500円+税)



2018/08/30



amazon.co.jp

就職活動をうまくやれず就職先が決まらないまま大学を卒業した湊マヒコが、本書の主人公。
いつも強引な幼馴染の
蝶子に呼びつけられた先は、古い銭湯である“刻の湯”
マヒコを迎えた蝶子、現在“刻の湯”の運営を任されている青年
アキラに翻弄されるまま、バイト兼居候としてこの銭湯に住むこととなります。
そしてそこはシェアハウスでもあり、アキラと蝶子の他、銭湯の3代目店主であ
る戸塚老人とその孫リョータ、奇抜なファッションのフリーエンジニア=ゴスピ、事故で片脚のない美容師=龍くん、ベンチャー社員で上昇志向の強いまっつん、というのが同居人の顔ぶれ。

いずれも、どこかフツー通りにはいっていない人間ばかり。
彼らの抱えている葛藤や悩みが、共同生活を営むうち、次第に見えてきます。

一言でまとめると、一人で堂々と世間に踏み出していく自信がまだ持てていない若者たちが一時的に足踏みしていられる場所、それがこの、肩肘張らずにいられて居心地の良いシェアハウス“刻の湯”である、と言って良いと思います。
そして時期が来れば、一人一人、この刻の湯を育っていく。
現代の若者たちにとって、そんな足踏みできる居場所がある、ということは救いに繋がるように感じます。

類まれな包容力ありと感じた青年アキラの意外な過去には驚きましたが、一人ずつ巣立っていく彼らの後姿に、エールを贈りたい気持ちでいっぱいになります。
1年間にわたる、マヒコを主人公にした青春群像ストーリィ。
独特の雰囲気、味わいが、本作の魅力です。

        


   

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