岡崎琢磨
作品のページ


1986年福岡県生、京都大学法学部卒。卒業後福岡県に戻り、実家の寺院に勤務しながら執筆活動を続け、2011年「珈琲店タレーランの事件簿−また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」が第10回「このミステリーがすごい!」大賞の最終選考に残る。受賞には至らなかったが原稿手直し後“隠し玉”として出版されたところベストセラーに。13年同作にて第1回京都本大賞を受賞。


1.珈琲店タレーランの事件簿

2.
春待ち雑貨店ぷらんたん

  


        

1.
「珈琲店タレーランの事件簿−また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を− ★☆


珈琲店タレーランの事件簿

2012年08月
宝島社文庫

(648円+税)



2018/02/17



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新刊春待ち雑貨店ぷらんたんを読む前に、まず作者のベストセラー・シリーズだという本書を読んでおこうと思った次第。

舞台は京都。主人公
「アオヤマ」が恋人から街中でいきなり投げ飛ばされ、別れをの意思を固めた後、ふと見つけて立ち寄った店が<喫茶タレーラン>。
こよなく珈琲を愛する青年である主人公は、この店の珈琲の美味と女性バリスタの
切間美星(きりま・みほし)の魅力に惹かれ、足繁くこの店を訪れることになります。
主人公が自分の身に起きた不思議な出来事をバリスタに語ると、鮮やかに彼女が謎解きをして見せるという、安楽椅子探偵型連作日常ミステリ。

いかにも人気を呼びそうな主役設定かつ舞台設定であり、実際に5巻まで既に刊行されているのですから、ベストセラー・シリーズというのも、むべなるかな。
しかし、私としてはちょっと不満もあり。という訳で、あえてその不満点を記載しておきます。

まず、主人公である
アオヤマ(本名:青野大和)の人物像が曖昧で不確かであること。そして、そんなアオヤマに何故か惹かれているらしいという点で切間美星にも減点、という思いです。
アオヤマの人物像が曖昧だった理由は最終章「また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」で明らかになるのですが、それでも主人公像に対する印象が基本的に変わらず。

もう一つは、仕掛けが過剰だという印象。ひとつの章で何重にも仕掛けを施すのは余り良いとは思いませんし、ストーリィ上だけでなく、読者に対しても何重もの仕掛けを施していたりする、という点。

まぁ、シリーズの続刊でこれらの点は修正されているのかもしれませんし、そうあって欲しいと思います。
※続刊以降を読み続けるかどうかは、現時点では未定です。


1.事件は二度目の来店で/2.ビタースウィート・ブラック/3.乳白色にハートを秘める/4.盤上チェイス/5.past,present,f*****?/6.Animals in the closed room/7.また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を

        

2.

「春待ち雑貨店ぷらんたん ★★


春待ち雑貨店ぷらんたん

2018年01月
新潮社刊

(1500円+税)



2018/02/20



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ハンドメイド雑貨作りの趣味が高じ、小さなハンドメイドアクセサリー店“ぷらんたん”を開いて4年になる北川巴瑠(はる)が主人公。
京都の街を舞台に、巴瑠と彼女の店を中心軸としたミステリ仕立ての連作ストーリィ。

珈琲タレーランの事件簿第1作と比べると、出来栄えに格段の進歩、そして格調の高さを感じます。
その理由のひとつは、登場人物たちの人物像が実体を伴うかのようにはっきりと目に浮かぶ処にあります。
そしてもうひとつは、どの章でもミステリは道具立てに過ぎず、肝心なのはそれぞれに何らかの悩み、鬱積を抱えている登場人物たちが、巴瑠がそっと寄り添うことに勇気づけられて、新たな道へと扉を開くストーリィになっている処。
なお、その巴瑠は決して導き役といった高みにいる訳ではなく、悩みや鬱積をやはり抱えていて、新たな一歩を踏み出す勇気を試されていることは他の登場人物たちと全く同じ、という処に共感と親しみが持てます。

・ストーリィは、付き合って半年になる恋人=
桜田一誠からいきなり結婚を申し込まれた巴瑠が、「考えさせて」とその答えを保留するところから始まります。巴瑠には他人に余り言えないある秘密を抱えていた、というのがその事情。その経緯を描いたのが冒頭の「ひとつ、ふたつ」
・「クローバー」の主役は、地元福岡に残った恋人との遠距離恋愛に奮闘している女子大生の
小高未久
「レジンの空」の主役は、一誠と大学以来の友人で巴瑠も親しい仲となった名倉友則。現在付き合っている恋人との仲が今一歩進展しない悩みを2人に打ち明けます。
・「手作りの春」の主役は再び巴瑠。“ぷらんたん”を今後も続けていくかどうか、その覚悟が試されるような出来事が相次いで巴瑠の身に降って湧きます。

最後は、巴瑠が力強い一歩を前に向かって踏み出すところで、本連作ストーリィは締めくくられます。
春の訪れ、そんな読後感は本書題名に如何にも相応しい。
是非、シリーズ化を望みたいところです。


ひとつ、ふたつ/クローバー/レジンの空/手作りの春

    


  

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