おーなり由子作品のページ


1965年大阪生。絵本作家・漫画家。やわらかな絵と文による著書多数。


1.月の砂漠をさばさばと(共著)

2.ミルクのお茶

3.きれいな色とことば

4.ひらがな暦

 


   

1.

●「月の砂漠をさばさばと(文・北村薫) 

 

 
1999年08月
新潮社刊
(1400円+税)

2002年07月
新潮文庫化

 
1999/09/05

9歳のさきちゃんとお母さん の毎日を描く、大人の童話のような本です。
2人はまるで友達のように仲の良い母娘です。そんな2人の日常生活でのやり取りを聞いていると、とても好い気持ちになります。
表題になっている「月の砂漠」の歌も、お母さんにかかるとユーモラスな歌に変わってしまい、忘れ難い思いがします。また、「ダオベロマン」や、さきちゃんの学校での隣席ムナカタ君とさきちゃんのお母さんの連絡帳ごっこも、なかなかに楽しいです。
北村さんらしい優しさに溢れた本ですが、といって子供向けの本ではなく、やはり大人向けの本なのでしょう。
でも、この本の楽しさは、絵を担当したおーなり由子さんあってのことだと思います。絵だけ見ていても、とても楽しいのですから。おーなり由子さんのおかげで、素敵な本ができあがりました。
この楽しさを味わえる心を失いたくない、そんな気持ちがします。

くまの名前/聞きまちがい/ダオベロマン/こわい話/さそりの井戸/ヘビノボラズのおばあさん/さばのみそ煮/川の蛇口/ふわふわの綿菓子/連絡帳/猫が飼いたい/善行賞のリボン

  

2.

●「ミルクのお茶」● GIRL FRIENDS' MILK TEA  ★★



 
2001年09月
新潮社刊
(1200円+税)

 
2001/12/22

大人向けの絵本といった感じの、おーなりさんの本は、これまで何度も見かけ、魅力を感じていましたが、これまで買うに至っていませんでした。
すぐ読み終わってしまう薄い本ですから、わざわざ買うのも勿体無い、とつい思ってしまう所為でしょう。
しかし、本書は、書店で見かけてすぐに買いました。題名からして、温かそうで良い。中身の絵も全く同様。そして、私もミルクティーは好きですから。
たまにミルクいっぱいの紅茶を一緒に飲むのが、隣人のリリコさんと相通じる楽しみ。しかし、リリコさんはまもなく引っ越してしまう。でも、80歳、100歳のおばあさんになっても、一緒にお茶を飲もうねと、リリコさんに呼びかけます。
ミルク・ティーのまろやかな温かみ、穏やかだけれどもしっかりと続く友情。それがこの絵本の中には詰まっていて、とても心が和みます。
お薦めしたい一冊!

  

3.

●「きれいな色とことば」● ★★

 

  
1998年11月
大和書房

2002年07月
新潮文庫刊
(590円+税)

2002/07/29

夕焼けの中にある様々な色、抜けるように青い空、夏だからこその色、そんないろいろな色に彩られた思い出を、絵と文で語っていく一冊。

思い出、子供時代の記憶の中には、いろいろな色がいっぱい詰まっていました。ところが、現在の日常には、あまり色を意識することがありません。ビルに囲まれた生活ばかりを送っている所為かもしれません。
それだけに、本書を読んでいると、懐かしい時代に引き戻される気持ちがします。

おーなりさんは、この本を2年程かかって少しずつ書いていったそうです。ですから、読む方も、少しずつ色を見つけていくような気分で読んでいくのが良いでしょう。

はじまりの色/青いたからもの/夏の色/透明な風船/みどりのたべもの/橙色のチャイム/白い湯気のなかで/赤いめがね/色の名前

    

4.

●「ひらがな暦−三六六日の絵ことば歳時記−」● ★★

  

   
2006年11月
新潮社刊
(1900円+税)

 

2006/12/24

 

amazon.co.jp

おーなりさんの本は薄い本が殆どだったので、簡単に読めるだろうと思っていたら、本書を手にとってその厚さにびっくり。
1頁1日分とはいえ、毎日を綴れば確かにこれだけの頁量にはなるのですけど・・・。

本書は、おーなりさんが「ずっと作ってみたかった本」だそうです。そして表題の「ひらがな−」は、「歳時記や暦に詳しくない人でも季節や三六六日を楽しめる、ひらがなのようにやさしい暦の本にしたいと思っていたから」とのこと。
本書を読んでいると次第に、おーなりさんのそんな思いがじわじわと伝わってくるのを感じます。

1日1頁の絵入りエッセイ。そして下の注釈スペースには、その日が「なんの日」か、さらに季節の行事の説明とかが加えられています。
この部分も、エッセイに勝らずとも劣らず、実に楽しいのです。まるで知らなかった知識を得られるのも嬉しいこと。

・1日1頁ですから、1年をかけて1頁ずつ読む方が本来ふさわしいのかもしれません。決して図書館の貸出期限をしながら急いで読むよりは。
・でも、1年を通して一度に読むと、過ごしてきた1年を振り返るような気持ちになります。それもまた年末の読書にはふさわしいような気がします。
・毎日が同じような日々を繰り返し、あぁまた1年が終わってしまったと思うのが常のここ数年でしたけれど、1年ってこんなにいろいろな日々の積み重ねだったのかとしみじみ感じる気持ちになります。
・季節の変化、季節毎の野菜・果実、季節の行事。そんな1日1日をしっかり味わっていられたら、さぞ豊かな1年であることでしょう。子供の頃にあったそんな日々は、いつの間にか失われていました。
・改めて驚いたのは、日々、日本全国のあちらこちらで様々なお祭が行われていること。そんなお祭を日本全国追いかけて見て回ったら、さぞ楽しいことでしょうね。そんな夢みたいなことを考えるのも楽しい。
四季の変化が大きい日本だからこそ、味わえる楽しみも多い。日本に生まれたことを嬉しく思う、そんな本でもありました。

こんな素敵な本を作ってくれたことに、そっとおーなりさんに感謝します。

 


 

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