野村胡堂作品のページ


1882(明治15)年岩手県生。19
12(明45)年報知社(後の報知新聞社)入社、政治部外交記者。31(昭和6)年「文芸春秋オール讀物号」に「銭形平次捕物控」の第一作「金色の処女」を発表。49年捕物作家クラブが結成され、会長に就任。56年郷里に胡堂文庫を設け、蔵書を寄贈。58年第6回菊池寛賞、60年紫綬褒賞を受賞。63年肺炎により死去。

  


 

●「銭形平次」(縄田一男編) ★★

 


2002年10月
中公文庫刊

(590円+税)

 

2003/04/07

縄田一男編“時代小説英雄列伝”の中の一冊。
銭形平次については今更説明するまでもないでしょう。私の年代では、大川橋蔵主演のTV版“銭形平次”が圧倒的存在。
このTVドラマも長かったのですが、原作自体、長篇21作、中篇18作、短篇 341作と、数ある捕物帳の中でも質量ともに最大の作品であるそうです。

特徴は、何と言っても子分・ガラッ八「親分、た、大変だ」の一言。そしてこのガラッ八と平次親分のやり取りは、まるで掛け合い漫才のようです。その反面、本書に収録された作品の限りでは、恋女房・お静の存在はあまり目立たず、奥ゆかしいもの。
この捕物帳、純然たる探偵小説であることに間違いはないのですが、事件の真相が明らかになって犯人の犯行動機が心情的にみて無理ないものと思うと、平次は平然とそのままにしてしまう。この辺りが珍しい。まるで、平次が完全な是非決定権をもっているかのようです。
そんな平次のキャラクター設定は、人を縛るのが嫌いな男、というもの。成る程なぁ、この辺りが平次の魅力かと思う次第。

【銭形平次捕物控】平次屠蘇機嫌/五月人形/赤い紐/迷子札/鉄砲の音/【随筆銭形平次】平次身の上話/捕物帖談義/捕物小説は楽し【解説】「無可有郷(ユートピア)」の守護者

 


  

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