野上大樹
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1975年生、防衛大学卒。佐賀県在住。霧島兵庫名義にて第20回歴史群像大賞優秀賞を受賞し、2015年「甲州赤鬼伝」にて作家デビュー。23年筆名を野上大樹に変更。


1.信長を生んだ男(霧島兵庫名義) 

2.ソコレの最終便 

  


       

2.

「ソコレの最終便 ★★   


ソコレの最終便

2024年06月
集英社

(2000円+税)



2024/08/29



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ソコレ」とは何か? というのがまず浮かぶ疑問の筈。
火砲車両や指揮車両等々を繋げた<
装甲列車>、それがソコレです。

敗戦間近、ソ連軍がいつ攻めてくるか分からない状況下にある満州、
朝倉九十九陸軍大尉(29歳)が率いる一○一装甲列車隊に、関東軍総司令部より緊急命令が下されます。
それは国境地帯で立ち往生してしまった日本軍唯一の巨大列車砲を回収し、大連港まで届けよ、というもの。
しかし、<ヒトマル・ソコレ>は既に老機関車、そのうえソ連軍の最新戦車との攻防が待ち受ける中、列車隊は任務を果たすことができるのか?

任務を果たせるかどうかだけなら、単なる戦争ドンパチもので終わってしまいます。
本作がそれで終わらないのは、列車隊に飛び込んできた日本赤十字の救護看護婦=
雲井ほのか(17歳)の存在があるからです。
戦争であるからには人の死はやむを得ない犠牲と考える朝倉に対し、敵味方区別せず命を助けようと奮闘する雲井の姿勢は対照的です。
その結果列車隊は、皆殺しにあった日本人避難民の中でただ一人生き残った、赤ん坊まで抱え込むことになります。

任務を果たすためではなく、人を救うために突っ走る、だからこそこの列車隊の闘いに感動があります。

戦争ものはそれなりに読んでいますが、装甲列車が登場するストーリーは初めてと思います。
それだけに、ソコレならではの困難、個性に興味深々。
なお、終盤のソコレ(日)対ソコレ(露)の対決は、読み応えたっぷりです。

序章.ノモンハン/1.昭和20年8月9日、出発の日/2.北へ/3.西へ/4.半島へ/5.終着駅/終章.ノモンハン後日−始まりの誓い

           


  

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