西本 秋
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1972年福井県生、立命館大学卒。2002年「過去のはじまり未来のおわり」にて第24回小説推理新人賞を受賞し作家デビュー。

 


           

「葉書の中の白い街 ★☆




2014年03月
東京創元社刊
(1800円+税)



2014/04/06



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高校生の一宮花と小学生の修(しゅう)という姉弟が、春休みの初め、また吹雪が舞う夢野町の“ゆめのはら商店街”に2人だけでやってきます。
2人の目的は、6年前に失踪したままの父親が3年前に葉書を出したらしい場所が、この夢野町だったから。
そこにある“ゆめのはら”すっかり寂れてしまった商店街。題名の「
白い街」とはこの商店街のことですが、その名の所以は取り壊し中のファッションビルの砂埃がひどい所為と、全く夢のないもの。
真っ直ぐな性格の修はさっそく町の皆に父親のことを聞いて回りますが、全く反応なし。住民たちは何かを隠しているのでしょうか。
一方、一宮姉弟にしろ、姉の花は何かを隠している様子。問われる者と問う者、いずれの側にも何かを隠している様子があり、そこが読み処です。
姉と弟は、父親から届いた葉書を片手に、住民たち一人一人を訊ね歩くことになるのですが、そこは一宮姉弟が無理やり居候を決め込んだ訳有りらしい画家の
道井明人とは違って皆、姉弟に優しい。
その優しさの裏に、何が隠されているのか、というミステリ。

ストーリィと真相に格別のものは感じませんが、どこまでも真っ直ぐな修が沈んだような商店主たちをひっかき回し、商店主たちの間に何らかの波紋を広げていくという展開が胸に快い。

                 


   

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