仁木英之作品のページ No.2



11.水平線のぼくら

12.仙丹の契り−僕僕先生No.8−

13.ちょうかい

14.恋せよ魂魄−僕僕先生No.9−

15.神仙の告白【旅路の果てに】−僕僕先生No.10−

16.立川忍びより

17.千夜と一夜の物語

18.師弟の祈り【旅路の果てに】−僕僕先生No.11−

19.立川忍びより−忍ビジネスはじめました!−


【作家歴】、僕僕先生、薄妃の恋、胡蝶の失くし物、千里伝、高原王記、さびしい女神、先生の隠しごと、海遊記、鋼の魂、童子の輪舞曲

仁木英之作品のページ No.1

   


            

11.
「水平線のぼくら 


水平線のぼくら画像

2014年06月
角川春樹事務所刊
(1500円+税)



2014/07/02



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奄美大島の高校でノルディック・スキー部?
どんな面白い展開になるのかとわくわくして読みましたが、率直に言って期待外れ。

奄美大島の高校2年生=桐隆文の前に突然現れた美少女の転校生は、かつてノルディック・スキーで将来有望と期待されていたという高橋麻巳
その麻巳は登校した途端、水泳部の
鼎映見に勝負を挑んで勝ち、水泳部をノルディック・スキー部に鞍替えさせます。
もう一度空を飛びたいという麻巳の望みを叶えようと、隆文、映見、隆文の親友である
中洋介の3人が麻巳に協力して奮闘を始めます。
しかし、何故麻巳は、生まれ育った長野からこの奄美大島にやってきたのか。その謎には、隆文や洋介の周囲にいる大人たちも深く関わっていた・・・・。

ちょっぴりスポーツとちょっぴり恋心を重ねた青春篇に、奄美大島の土俗的ファンタジー要素を加えたストーリィ。
しかし、それぞれが今一つ、中途半端に繋がった作品という印象が否めません。ストーリィに厚みも感じられませんし。そこが仁木英之さんらしい、と言えばその通りなのですが。

なお、舞台が奄美大島ということで、冒頭に挿入されている奄美大島の地図とストーリィを見比べながら読み進んだこと、多少なりとも奄美の雰囲気を感じ取れたことは、楽しかったです。

   

12.
「仙丹の契り−僕僕先生− ★☆


仙丹の契り

2014年08月
新潮社刊
(1500円+税)

2017年04月
新潮文庫化



2014/09/11



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第8弾。
本書はある意味、ひとつの区切りと言える巻かも知れません。
冒頭でこれまで長く一緒に旅をしてきた
薄妃蒼芽香が、程海の呉紫蘭の元に留まることとなり、僕僕・王弁一行と別れることになります。その一方、本巻の最後では新たな旅の道連れが加わるらしいこと、目的地を決めての旅立ちとなるらしいことが語られます。

そのうえで本書ストーリィ、僕僕らに先立ち旅立った吐蕃(チベット)の医師ドルマの後を追うようにして僕僕・王弁一行(吉良・第狸奴・劉欣)も吐蕃へと向かいます。
途中、悪疫がはびこる村に行き当たり、その源を突き止めようとした僕僕は、怪異な面相に白粉と真っ赤な唇という怪人
デラクに出会います(これがオネェ言葉なのですから、全く現代的)。妖怪かと思うと、僕僕曰く、いや人間、でも人の能力を超えた力をもった厄介な存在だ、と言う。
その後辿り着いた吐蕃のラサ国で、病みついた国王から王位の禅譲を受けようと企むその弟
バイーの策謀に、ドルマ共々僕僕・王弁らは巻き込まれてしまいます。このラサ国での騒動が本巻での中心ストーリィ。

そして本巻での興味どころは、仙丹の薬を作るため、僕僕と王弁が交わる必要があり、という部分。ずっと望んできたことだというのに王弁、いざ僕僕に迫られると、まだ心の準備が出来ていないとしり込み。気をそがれるやら、如何にも王弁らしいと苦笑するやら。
まぁ中国歴史ファンタジーですからね、現代恋愛小説のような展開にはならないのですよ、やはり。

なお、そんな王弁を主人公とする本シリーズを最初から長く読み続けてきたファンとしては、本書で吉良が王弁を「主どの」と呼び、僕僕から教わった経絡を診る術で、王弁が未熟ながらも予想外の進歩を僕僕から認められるところが嬉しい。さすがの僕僕も苦労する闘いにおいて、王弁が僕僕を支えることにも繋がるのですから。 ファンの皆様、乞うご期待。

病をまく者治す者/賭けの腕前/新たな道連れ/王家の渓谷/初めての交わり/君の資質

      

13.
「ちょうかい−未犯調査室− Pre-Crime Investigation Division 


ちょうかい

2015年07月
小学館刊
(1500円+税)



2015/08/01



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出版社の宣伝文句を引用すると「構想5年! 前代未聞の警察(?)小説」とのこと。

目指すのは、これから起きる犯罪を未然に防止する、というもの。そのためにカモフラージュとして東京・吉祥寺の雑居ビルに設けられたのが、警察庁の外郭団体「
犯罪史編纂室」。
そこに集められたのは、それぞれの事情から懲戒免職になっても不思議ではないという問題警官ばかり。
そして彼らを束ねる室長はというと、女性キャリアながらどこか抜けている
枝田千秋警視。瞬間記憶を持ち主ながら、記憶がすぐ飛んでしまうという鳥頭女子。
語り手かつ主人公は、元々は腕利きの刑事だった
通島武志
さて彼らは、どのような活躍を見せるのか。

・・・と期待したのですが、何だか分らないままだったなぁ、という一言。
近未来的なストーリィ設定に個性的である筈のメンバーたち、さぞユニークでスリリングな展開が、と期待した私が先入観を持ち過ぎていたのか。
仁木さんが意図していた趣向とそもそもスレ違っていたのではないか、と思う他ありません。

続編もありそうです。そこではもっとストーリィが深まっていくのだろうと思いますが・・・・。

  

14.
「恋せよ魂魄−僕僕先生− ★☆


恋せよ魂魄

2015年08月
新潮社刊
(1400円+税)

2018年06月
新潮文庫化



2015/09/22



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、“僕僕先生シリーズ第9弾。
これまではファンタジーで楽しげなロードノベルという雰囲気が本シリーズの基調だったのですが、本巻ではすっかり様変わりしてしまった、という印象です。

前半こそ、
僕僕・王弁・デラクたち一行が行き着いた村で、心臓に異常があるらしい少女タシの治療に王弁が奮闘かつ苦悩するという、一見した限りではこれまでとそう変わることのないストーリィに思えます。
しかし、一歳の治療を僕僕から託された王弁、薬師として冷静に病に向かい合う姿勢、その覚悟を僕僕先生から試される、試練を与えられたといった風です。

そして後半では、養父母を人質に取られた
劉欣と諜報組織である“胡蝶”の長=貂(てん)との抗争、都の城壁まで達した僕僕と王弁らの前に立ち塞がる強敵との闘いと、全面的な闘争ストーリィ。ここでもまた不完全ながらも王弁の仙骨の力が試されるという具合です。
劉欣の前には、仲間か裏切り相手か不確かな
田欧、胡蝶の一員らしいが歌で劉欣を力づけるという謎の歌い手が登場。
さらに
司馬承禎、王方平もそろって登場。
僕僕・王弁一行にはかつての巻で登場した
ラクス(雲南の地で専横的な王だった)、ウイグル族と戦い続ける車騎将軍の葛福順が登場、敵味方入り乱れ賑やかです。
とはいえ本巻の最後では、暗い雰囲気がストーリィ全体を覆います。
次巻は、楽しみにではなく、心配しつつ待ち望むということになりました。


序/1.名薬師・王弁/2.蝶の歌声/3.経絡の池/4.賽を振れ/5.光の子、再び/6.死而不失

       

15.

「神仙の告白【旅路の果てに】−僕僕先生− ★☆


神仙の告白

2016年11月
新潮社刊

(1400円+税)



2016/12/10



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美少女仙人の僕僕とニート青年の王弁コンビによる中国歴史ファンタジー、僕僕先生シリーズ第10弾。
前巻もそうではあったのですが、本書においてはのどかで親しみやすいかつての雰囲気は消し飛び、ひたすら抗争のストーリィ。

冒頭で王弁青年は眠りについてしまい、その王弁を助けるために僕僕は
薄妃、吉良と共に行動します。
ところがいつの間にか僕僕は、人の世界を滅ぼしかねない危険な神仙と位置付けられてしまっていて、
魏夫人、かつての弟子の華陀までもが僕僕の前に立ち塞がります。
また、
王方平は自分の権力拡大のため“破滅の象徴”とされる僕僕を手中に収めようとし、一方で司馬承禎は胡散臭い行動を繰り広げます。
その他、「三国志」の英雄で今や神仙の
関羽将軍、さらには何と「西遊記」の面々=かつて斉天大聖で今は闘戦勝仏(孫悟空)天蓬元帥(猪八戒)、捲簾大将(沙悟浄)までもそろって登場し、前巻以上にスケールアップ。誰が敵で味方か分からない混戦が繰り広げられます。
要は人の現世を一旦滅ぼして世界を新しくするか、それとも支えて維持するか。

正直言って、神仙間の争いが入り乱れ過ぎてついて行かれず、また楽しいとはとても言えない展開になってしまったなぁと思う処あり。
それでも最後の場面、王弁に対する僕僕の温かい思いが伝わってきて、本巻全体の印象を一変させたように感じられます。

本シリーズは次の第11巻で完結らしい。幕を下ろす直前のゴタゴタと思えば、混沌としたストーリィもやむを得ないものかと思います。

1.眠る王弁/2.雄黄の髄/3.神医と美髯公/4.弟子たち/5.混沌の囁き

        

16.

「立川忍びより ★☆


立川忍びより

2017年02月
角川書店刊

(1300円+税)



2017/03/21



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大倉多聞、就職先はブラック企業。ついに耐え切れず退職し、立川駅南で中華料理店を夫婦で営んでいる実家に戻ります。ところが、父親が背負っている借金のかたに婿入りを命じられることになろうとは。
その婿入り先は、小学生時代に仲の良かった
藤林三太の実家、相手は三太の妹の杏子でまだ高校生とのこと。
まずは当主で祖父の
源吾から藤林家に住み込んで家事等を担い修行をするよう命じられるのですが、その藤林家、何と現代にまで続く忍者の家系とは!

如何にも面白そうな設定だったのですけれど、面白いところまで至らずに終わってしまったという観あり。
何しろ、何故現代にまで忍者の家系を守る必要があるのか、という点にもまるで触れられず仕舞い。
それでは三太、杏子が自由のようで不自由と家を出たがるのも無理はない、という印象です。

おそらく本ストーリィ、続編があるのでしょう。
多聞と杏子の許婚関係は成立するのか?という興味。
そして 藤林家に五百年も仕える大蝦蟇=
山王丸の存在、なぜか吸血鬼まで登場、そのうえ同じ忍者家系である一派との争いと、掘り下げれば面白そうなネタはまだ盛り沢山なのですから。
本ストーリィ中でも一応の争いごとは起きていますが、まだまだプロローグ、“立川忍び”をめぐる状況を紹介がてら描いたに過ぎないと受け留めるのが適当でしょう。

     

17.

「千夜と一夜の物語(ちよとひとよ) 


千夜と一夜の物語

2017年09月
文芸春秋刊

(1550円+税)


2017/10/19


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仁木英之さんとはどうも波長が合わないのかもしれないと、仁木作品は手控えていたのですが、題名から「千夜一夜物語」のオマージュかもしれないと、つい手を伸ばした次第。

折口千夜(ちよ)は28歳。多くの人から声が魅力的と言われ、声優の道を目指していましたが、結局挫折。姉である一夜(いちよ)が勤める化粧品会社に見習社員としてコネ入社したばかり。
飲み会の帰り、千夜は途中見かけた洋館に誘い込まれるように入り込み、そこで
<魔王>と名乗る存在に出会います。
その魔法から脅されるまま、毎夜、千夜は魔王の元に通って物語を語らなくてはならない、という状況に追い込まれます。

う・・・・ん、結局どういう物語なのか、作品なのか、よく判らないんですよねぇ。また、何とか判ろうとする気にもならない、という処。

ファンタジーあるはモダン・ホラーといった作品。だからこそ、余計に判らない、と言って良いでしょうか。
作中物語を千夜が語る、という趣向は楽しみだったのですが、千夜と一夜にとってこの出来事は何だったのか。何となく推測はついても、納得感を覚えないんですよねぇ・・・。

           

18.

「師弟の祈り【旅路の果てに】−僕僕先生− ★☆


師弟の祈り

2018年06月
新潮社刊

(1500円+税)



2018/07/09



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僕僕先生”シリーズ第11弾にして完結編。

前巻
神仙の告白【旅路の果てに】に引き続き、いやそれ以上にスケールアップして、王方平僕僕&王弁たちとの壮大な闘いが繰り広げられます。

急にスケールが壮大してしまいついていくのが大変、というのは前巻と同様。
要は、神仙と人間との関係を巡る闘いなのです。人間は神仙にとって単なる道具に過ぎないのか、それとも神仙と共存する存在なのか、ということ。

自分が世界の主になるため、邪魔になる人間を一掃し、一から世界を作り直そうと目論んでいるのが王方平。
それに対し、人間は決して神仙の餌ではなく共存すべき遜歳として、現在の人間社会を守ろうとするのが、僕僕や王弁とその仲間たち。
玄宗皇帝の他、三国志の英雄である関羽雲長、西遊記の孫悟空まで登場し、まさに敵・味方入り乱れるの観。
第1作の長閑な雰囲気と比較すると、本作の戦いに明け暮れる様子は同じシリーズとは思えない程。ちょうど
「ハリー・ポッター」の第1巻と最終巻との差を思い出すようです。

最後は、僕僕と王弁が重ねてきた長い旅が、決して無意味なものではなかったことが暗示され、中国歴史ファンタジー版ロードノベルは完結です。
やれやれやっと完結したかという思いと、これまでのロードノベル・ストーリィへの懐かしさが一緒くたになって胸を満たしているという気持ちです。
いつかまた、旅を続ける僕僕と王弁たちに再会したい、という思いが胸の中に残ります。


あらすじ/序/1.災厄の波/2.春秋千三百/3.天空の風雲/4.届く想い 届かぬ願い/5.それぞれの絆/6.一陰一陽成太極

      

19.

「立川忍びより 忍ビジネスはじめました! ★☆


立川忍びより−忍ビジネスはじめました!−

2019年03月
角川書店

(1400円+税)



2019/05/06



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立川忍びより続編。
前作だけでもう良いかなと思っていたものの、興味も残っていたという訳でこの続編も読書。

基本的な構図は前作どおり。
とはいえ、毎日いろいろな罠を仕掛けられ続け、逃れる能力も少しずつ上達する中、いつしか忍びの能力も向上しているということらしい。
今回、少しは稼がねばどうにもならないと
多聞が考え付いたのが“忍ビジネス”。つまりは、忍びの技をもって困っていること、悩みごとの相談に応じようという商売。
とはいえ、料金は依頼人の一ヶ月の月収相当と決めたものの、やっと見つけた依頼人が子供だったり、フリーターばかりとあっては赤字になりかねませんよねー。という訳で連作構成。

「忍ビはじめます」:別れた恋人=中島明里からの依頼。現恋人が何か隠しごと。その中身は?
「北京対上海」:両親が経営する中華料理店<北京楼>に何故か挑戦状。その挑戦者からの依頼って、大丈夫なの?
「愛する者よ、ただ蛙の怒りに任せまつれ」:執拗なイジメに苦しむ中学生=吉村紘一からの依頼。
「蜥蜴食めばはらから思はゆ 蟋蟀食めばまして偲はゆ」:杏子の友人である澤田七海の悩み解決のため多聞、女子高生の変装して杏子と共に女子高へ潜入し・・・。
「ゴールテープの切り方」“立川デブ四天王”の一人である北田俊明が突然ダイエット開始?
「秘薬の秘」:多聞が退職したブラック会社、かつての同僚=杉田圭吾を救わんとし多聞は・・・・。

多聞、杏子、山王丸、そして三太と、個性的な登場人物がそれなりに持ち味を発揮して綴られる、軽妙な連作ストーリィ。
今回、本作品は僕僕先生の枠組みを現代に置き換えたストーリィのように感じられました。それなりに面白く、それなりに現代社会の課題も語った連作ストーリィ。
それはそれで多聞と杏子の間が近づいている処に楽しみあり。


1.忍ビはじめます/2.北京対上海/3.愛する者よ、ただ蛙の怒りに任せまつれ/4.蜥蜴食めばはらから思はゆ 蟋蟀食めばまして偲はゆ/5.ゴールテープの切り方/最終章.秘薬の秘

      

仁木英之作品のページ No.1

     


  

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