夏樹静子作品のページ


1938年東京都生、慶應義塾大学卒。


1.検事霞夕子 螺旋階段をおりる男

2.検事霞夕子 夜更けの祝電

3.検事霞夕子 風極の岬

  


  

1.

●「検事霞夕子 螺旋階段をおりる男」● 

   

1985年04月
新潮社刊

1988年01月
新潮文庫

1996年02月
中公文庫

  

2000/09/29

初めて読んだ夏樹作品です。女検事・霞夕子 というキャラクターに惹かれたのが、読むきっかけです。
収録されているのは3篇ですが、いずれも倒叙形式のミステリ。まず最初に犯人の殺人に至るまでが描かれ、犯罪が行われた後に探偵役として霞夕子が登場、犯人とのちょっとした心理戦が展開します。
と説明すると、TVの“刑事コロンボ”を思い出しませんか。それも当然のこと、夏樹さん自身、コロンボのイメージがなんとなくて投影していると認めているのですから。
本書の魅力は、主人公である霞夕子にすべて負う、と言えます。小柄でさほど美人ではないが、愛嬌あるお多福顔の40代。また、独特のゆっくりとした口調が特徴。それでいて、女性初の主任検事、というのが霞夕子のキャラクターです。
ミステリ自体はあまり大したことはないと思いますが、主人公の個性で、それなりに楽しめた一冊です。

予期せぬ殺人/螺旋階段をおりる男/白い影

  

2.

●「検事霞夕子 夜更けの祝電」● 

 
夜更けの祝電  
2000年09月
新潮社刊
(1300円+税)

2003年11月
新潮文庫化


2000/10/16

“検事・霞夕子”シリーズの2冊目。
1冊目同様、倒叙形式のミステリです。その形式から、
犯人における犯行に至るまでの経緯、心理背景が描かれているのは当然なのですが、ストーリィの面白味もそこにあります。
本書では、とくに「橋の上の凶器」「早朝の手紙」の2篇に、
犯人となる女性たちの切なさが、強く感じられ、印象に残ります。
そんな事件に、
女性検事・霞夕子の個性が加わるが故に、本シリーズの魅力があります。
おっとりとしたお多福顔の霞夕子ですが、「現場好き」という評判をもち、その外観に似合わず、刑事達も見落とすかすかな手がかりに鋭い眼を光らすという意外性が、良いバランスになっているようです。
「知らなかった」では、お寺の家付き娘で婿養子をとった夕子の、自宅での姿をちょっと覗けることが、オマケ的楽しみ。
本シリーズは1年に1篇程度のペースで書かれているとのこと。そのため、1冊目の刊行から本書2冊目まで、だいぶ時間が空く結果となったようです。

橋の下の凶器/早朝の手紙/ 知らなかった/夜更けの祝電

   

3.

●「検事霞夕子 風極の岬」● 

 
風極の岬
  
2004年04月
新潮社刊
(1400円+税)

2007年02月
新潮文庫化

  
2004/05/31

“検事・霞夕子”シリーズの3冊目。
ここまで来ると、主人公である霞夕子というキャラクターもすっかり安定した観があります。その分マンネリ化も当然ある訳で、東京から北海道の釧路地検帯広支部へと夕子を単身赴任させたのは、まさに格好のタイミング。
大都会の東京と違って帯広では、いかに現場好きという評判をとる夕子でも、そう出番となるような事件は起こらない。
それでも、夕子が出向くとその傍から事件が発生する、という様子があるのですから、その点はご愛敬と言うべきでしょう。

各章の冒頭と終わりに夕子から夫・吉達へのメール文が付され、帯広の生活風景が織り込まれているところが、紀行文的要素。
それに加え、所轄範囲の広大さ、マリモ、凍死という北海道ならではものが問題点となるところが、地域性要素。この2つが本書の見所です。
複雑な人間関係を背景にした事件といっても、そう格別のものではない。霞夕子というキャラクター+北海道要素を楽しむのが精々といった短篇集です。

札幌は遠すぎる/マリモは語る/風極の岬/さい果ての花

  


 

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