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2.違法弁護 3.司法戦争 4.第一級殺人弁護 5.新検察捜査 |
●「検察捜査」● ★ 江戸川乱歩賞受賞 |
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1997年07月 1997/08/23 |
正直言って、あまり面白いとは感じませんでした。作者の意欲は感じますが、 登場人物のリアリティが今一歩。 ストーリィは、法制審議会委員の大物弁護士が殺害事件により始まります。その事件を担当するのが、主人公である横浜検察庁の若手女性検察官・岩崎紀美子。 検察官、弁護士という法曹制度の仕組みにまで踏み込んだ問題作という視点だったのでしょうが、自分達の利益にこだわる人間ばかりしか登場しなかったことが、作品の内容を薄くしたような印象を受けます。 |
●「違法弁護」● ★ |
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1998年11月
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弁護士の増加問題に関する決議争い、横浜における巡邏中の警官射殺事件からストーリィは始まります。 主人公は、横浜の巨大法律事務所の勤務弁護士・水島由里子。 ストーリィが、事件に深く関わらざるを得ない水島弁護士の側と、捜査本部の一員である柴崎刑事の側に二分されているような構成なのですが、とくに柴崎側の部分に半端さを感じざるをえません。 なお、法律を逆手にとった戦法、最後の決着のつけ方は、弁護士ならではのアイデアですが、「司法戦争」を読んでしまった後の所為か、いま少し物足りず。 ※弁護士業界内部の抗争を描いた作品に、小杉健治「宿敵」があります。 |
●「司法戦争」● ★★ |
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2001年06月 1998/12/31 |
「日本を震撼させるリーガル・サスペンス」、「最高裁の陰謀」、「圧倒的なスケールと驚愕の結末」というのが、本書の宣伝文句です。 主人公は、検察庁から判検交流で最高裁に出向し現在調査官である真樹加奈子。 しかし、その過程で更なる殺人事件が発生、事件は限りなく膨れ上がっていきます。そんな中、主人公は自らの責任感に基づき、独力で真相究明に突き進んでいきます。そこからの展開は、スケール、迫力、テンポとも文句なし、ぐいぐいストーリィに引き込まれます。 法曹界の内実と課題を明らかにしつつ、同時に読み応えある推理サスペンスに仕立て上げた一冊、冒頭の宣伝文句に誇張はありません。 |
●「第一級殺人弁護」● ★ |
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2002年07月 1999/09/08 |
本書は、連作5篇を収録。 主人公は、横浜で個人事務所を構える、独立したばかりの弁護士・京森英二。 軽い作品集といっても、当番弁護士制度を読者に紹介し、かつその実態を知らしめているのですから、中嶋さんの持ち味を今回もしっかり出していると言えます。 不法在留/措置入院/鑑定証拠/民事暴力 /犯罪被害 |
「新検察捜査」 ★★ |
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2015年10月
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若い女性を殺害してその心臓を取り出し喰う、という少年による猟奇殺人が発生。その裁判と同じ時間に行われた別の法廷で、社会保険診療報酬不正受給を問われた被告が入ってきた何者かに射殺されるという事件が発生。 岩崎は米国留学時の演習ミスが原因で訟務担当から現場に飛ばされ、横浜地裁には10年ぶりの配属。その間に結婚、離婚を経験し、現在は4歳の娘を抱えるシングルマザー。 単なるサスペンスに留まらず、事件の背景に現代社会でクローズアップされつつある問題を題材として取り扱っているのが、中嶋作品の読み応え。 サスペンスストーリィにおいて、上司の制止も聞かず、聖域も無視して猪突猛進する主人公像は、今は男性のものではなく女性のものなのかもしれません。 |
6. | |
「検察特捜 レディライオン Lady Lion」 ★★ |
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ずいぶん久しぶりだなぁ、と思う中嶋博行作品。 その本作主人公は、「検察捜査」「新検察捜査」に引き続き登場の女性検事=岩崎紀美子・36歳、4歳の娘を抱えるシングルマザー。 横浜本牧ふ頭で麻薬密売取引の現場に踏み込んだ麻薬取締官6名が、密売人の4人諸共、短機関銃でハチの巣にされて虐殺されるという衝撃的な事件が発生。 一方、岩崎紀美子は横浜地検から東京地検特捜部に異動、まだ新人ということで貿易会社の外為法違反容疑を一人で担当させられていたところ。 その貿易会社の船が、事件のあった埠頭近くに停船していたことから、岩崎はその貿易会社が殺戮事件に何らか関わっているのではないかと疑念を抱く。 そこから岩崎は、神奈川県警捜査一課長の郡司耕造と再びタッグを組んで事件の真相究明に立ち向かうこととなります。 そうした中、上司の補佐役として岩崎はNSS国家安全保障局に関わることとなり、防衛省背広組と陸上自衛隊の一佐、さらには新人時代の教育係で今は公安調査庁に所属している稲垣と再会することになり、防衛省と自衛隊における不穏な動きを知ることになります。 それから後の展開が凄い。岩崎紀美子の独走、いや暴走により、事件の真相が徐々に明らかになっていきますが、単身で暴力団事務所へ乗り込んだりといくら何でもやり過ぎではないか、と呆れてしまうくらい。 スペクタクルの事件捜査ものとしては、まさに怒涛の如しで面白いのですが、余りに暴走ぶりに現実感が追いつかない、と感じる次第です。 中嶋博行作品においてはとかく、きな臭い時事問題を題材としていることが多いのですが、本作においてもそれは変わりありません。 なお、「レディライオン」とは勿論、自称により岩崎のこと。 とにかく本ストーリィ、目まぐるしかったなぁ。 |