中川なをみ作品のページ


1948年山梨県韮崎市
生。2002年「水底の柩」にて第43回日本児童文学者協会賞を受賞。


1.
茶畑のジャヤ

2.
ひかり舞う

 


              

1.

「茶畑のジャヤ ★★


茶畑のジャヤ

2015年09月
鈴木出版刊

(1500円+税)



2018/01/28



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主人公の辻原周・11歳は、成績がいつも1番であることが仇となり、クラスを牛耳る健一郎に親友の洋介を絡めとられ、クラスで孤立してしまいます。
幼なじみの
加奈が心配してくれるものの、もう学校に行けそうもないと、周の心は折れる寸前。
そんな時、スリランカでの水力発電所建設工事に携わっている祖父が、一緒にスリランカに行かないかと誘ってくれ、冬休みの直前、周は祖父と2人でスリランカへと向かいます。

スリランカの山中にある
コタガラの宿舎では、周の驚くことばかり。
清潔ではないこと、料理がまずいこと、それなのに運転手の
セナもコックだと名乗るカスーンもまるでマイペース。
さっそく茶畑でセナの娘だという同年代の
ジャヤ(何と日本語ができる)と知り合った周は、ジャヤからいろいろなことを教わります。
中でも周にとって衝撃的だったのは、
シンハラ人タミル人の民族対立による内戦が、つい5年前まで26年間にわたって繰り広げられていたこと、シンハラ人とタミル人では学校さえも全く別であること等々。

可愛い子には旅をさせろ、とはよく言ったものです。
ここスリランカで、様々な現地の人や外国人と接した周は、いろいろな人がいること、角度によって見え方は変わること、一生懸命考えて行動することが必要であること等々を、周はジャヤやセナを通じて学びます。
特に同じ子ども同士の方が伝え合うものも大きいのでしょう。

本物語では、はっきりとした目標を持っているタミル人の少女ジャヤの生き生きとした姿にとても惹かれます。
そうなんですよね〜、争いごとを収拾するには、自分の都合ばかり主張するのではなく、相手がどういう気持ちでいるかということをよく考えなくてはいけないのだ、ということを改めて思い起こさせられます。

周にとってもジャヤにとっても、貴重となる日々の物語。
知り合い、そして語り合って、世界中に友情の輪が広がっていけばいいのにと、心から思います。


1.秋の夕暮れ/2.スリランカへ/3.茶畑の少女/4.すり鉢/5.悲しい歴史/6.ジャックフルーツ/7.ポロンナルワ/8.ドロボー/9.波の壁/10.格闘のあと

              

2.

「ひかり舞う ★★


ひかり舞う

2017年12月
ポプラ社刊

(1500円+税)



2018/01/31



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戦国末期から豊臣〜江戸時代を、一人で強く生き抜いた平史郎を主人公とした少年の成長&遍歴物語に、日本の歴史を組み合わせた、児童向け作品。

平史郎の父親は、明智光秀に衣装係として仕えた武士。秀吉との山崎の戦いで光秀と共に父親も討ち死。
母親は平史郎7歳、妹の
サキ4歳を連れ屋敷を出ますが、漂浪の中で幼いサキは病を得て死に、母親は戦場での首洗いの仕事を選びます。
そこから平史郎は、母親と別れ自立の道を歩むことになります。
元々布に惹かれることが多く武士には向かなかった平史郎、針仕事を身に着け、
縫い物師として世を渡っていきます。

仕事を求めて平史郎は堺、京の都へ。知り合った絵描きの
周二と共にその故郷である対馬へ。そして依頼を受け、秀吉の朝鮮攻めの舞台である半島へと渡ります。
そこで知り合ったのは、身分あるらしい朝鮮の少女「
おたあ」。サキの代わりに彼女を守ろうと決意した平史郎は、おたあを連れて帰国しますが・・・・。

人と人との出会い。自立、成長、人生の歩み。そして日本と朝鮮との関係、日本におけるキリスト教布教、秀吉と家康による禁教令、と歴史問題が組み合わされて、児童向け作品としては学ぶところの多い作品に仕上げられています。

平史郎という孤児の奮闘も読み応えありますが、おたあ、るいという、平史郎と深い関りをもつ女性の存在が魅力的。
児童向け作品とはい、充分楽しめました。


第一部 ひかり、ほのかに
1.さまよう日々/2.サキ/3.首洗い/4.雑賀の鉄砲衆/5.さるぐつわ/6.白旗/7.堺の町で/8.浜辺の暮らし/9.京の都/10.対馬
第二部 ひかりの中へ
11.半島へ/12.舞いあがるチマ/13.おたあのしあわせ/14.神さま/15.人買い/16.望郷/17.別れ/18.深夜の再会/19.非情な神/20.変わりゆく日々/21.るい/22.明日へ

        


   

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