水島かおり作品のページ


1964年東京都生、駒沢学園女子高等学校卒、俳優・脚本家。友人のオーディションに同行してスカウトされ、80年「小さな追跡者」にて俳優デビュー。デビュー当初はアイドルユニット“Lady oh!”のメンバーとして歌手活動も。90年代には「火曜サスペンス劇場」や「土曜ワイド劇場」に常連出演。矢沢由美名義で脚本家、雲丹名義で映画編集としても活動。夫君は映画監督の長崎俊一氏。

 


                   

「帰ってきたお父ちゃん Our Daddy Is...Back!? ★★☆


帰ってきたお父ちゃん

2022年09月
講談社

(1700円+税)



2022/12/23



amazon.co.jp

ハチャメチャな父親、父親に振り回され続けの家族を描く、俳優である著者=水島かおりの半自伝的小説、との由。

しかし、「ハチャメチャ」などという言葉ではとてもこの父親を言い表せません。
これは凄い、というより、「ひでぇな、こりゃ」という感じ。

なにしろ、借金を抱えて差し押さえを喰らうたび、自分はどこかに姿を消して、残された家族が憂き目を喰らうの繰り返し。
また、妻の死に目だというのに酔って近寄ろうとせず、葬式は20歳の娘(本書主人公である
由美子)に押しつけ、そのうえ病院の支払いや葬式費用に充てなくてはならないというのに、香典も生命保険金も娘から奪い取ろうとするのですから。

しかし、余りの身勝手さ、余りの噴飯ものの振る舞いからどこか憎めず、それで許されてしまうところが、母と二人の子供たちにとっては不幸というか、ドタバタ暮らしの原因。

要は、だらしないというより、意気地がない。困ったことや苦しいことがあると、すぐ酒や競馬に逃げてしまう。平気で借金を重ね、先のことを考えない、家族が困ることなどまるで考えない、という性分。
そんな亭主、父親をもった家族はさぞ大変だと思うのですが、想像してみる必要などありません、本小説を読めばすべてがそこにあります。
そんな父親を好きだという
セッちゃん(母親)の、がんで余命僅かとなった最後の日々については、もはや言葉もありません。
そしてその14年後、今度はその当人が喉頭がんで余命2年と宣告され、死ぬまで家族に迷惑をかけまくった日々が、現在進行形ストーリィ。

凄絶というか抱腹絶倒というか、これはもう実際に読んでみて貰わないと判らないこと。
といういう訳で、是非読んで実体験してみてください。お薦め。


序章.お父ちゃん、がんを宣告される/1.ある日あらわれたお父ちゃん/2.青春、そして芸能界へ!/3.荒れる我が家/4.ハチャメチャ家族旅行/5.寄り添う日々/6.お父ちゃんとの対決/7.七年ぶりの再会/8.力の限りがんと闘う/9.不思議な旅立ち

        


   

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