|
|
「幽玄の絵師−百鬼遊行絵巻−」 ★★ | |
2022年04月
|
室町幕府の8代将軍=足利義政に近侍した実在の絵師、土佐光信を主役に、妖異な出来事を描いた連作風ストーリィ。 時代は、大飢饉や疫病の蔓延等によって民たちが苦しみの渦中にあるにもかかわらず、<室町殿>造営のため、平然と増税や賦役を科している義政の世。 そんな時代だからこそか妖異な事象が相次ぎ、その都度義政は光信にその真偽を見定めるよう命じます。その結果として光信はそれら妖異なものと向かい合う、というストーリィ。 そしてその光信、「見る者」である絵師だからなのか、普通の人間には見えぬものが見える、というのが、本作の肝心な処。 7篇の中でも読み応えを覚えたのは、8歳の真魚(後の光信)が絵師になると決意する経緯を描いた「雨の段」、多数の鳥を操る鳥面冠者の登場する「鳥の段」、「雨の段」から連なる結集篇とでも言うべき「嵐の段」。 そして、義政の本性と光信の絵師という姿をはっきりと対比せしめた「終の段」が圧巻。 本ストーリィは、<応仁の乱>前夜を描いた、幽玄な歴史長編です。 ただし、もう一つ本作に魅了されなかったのは、足利義政という問題人物に関心を持てなかったからかもしれません。 風の段/花の段/雨の段/鳥の段/影の段/嵐の段/終の段 |