宮内悠介作品のページ


1979年東京生、92年までニューヨーク在住、早稲田大学第一文学部卒。在学中はワセダミステリクラブに所属。インド、アフガニスタンを放浪後、麻雀プロの試験を受け補欠合格したもののプログラマー。囲碁を題材とする「盤上の夜」にて第1回創元SF短編賞に応募。受賞は逃したものの選考委員特別賞となる山田正紀賞を受賞。創元SF文庫より刊行された秀作選アンソロジー「原色の想像力」に同作が収録され作家デビュー。2012年「盤上の夜」にて第33回日本SF大賞、17年「カブールの園」にて第30回三島由紀夫賞を受賞。

  


     

●「盤上の夜」● ★☆         日本SF大賞


盤上の夜画像

2012年03月
東京創元社刊

(1600円+税)

2014年04月
創元推理文庫化

  

2012/05/01


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一応SFジャンルの中に入るのでしょうか。碁、チェッカー、麻雀、古代ゲーム、将棋、再び碁と、様々な盤上ゲームにおいて発揮される人間の知力の不思議と、その広大な世界に通じる可能性を描いた短篇集、6篇。
作者の強い意欲は感じるのですが、しかし、これ程私に縁遠い世界もありません。何しろ、将棋、碁、麻雀と全てに亘って不案内なのですから。

冒頭の「盤上の夜」は、第1回創元SF短編賞受賞を逃したものの、山田正紀賞を贈られた佳作。
四肢を失った若い女性が苦境を脱する手段として選んだ囲碁を選んだところ、ついには囲碁盤を感覚器とするまでに至り、奇跡的な能力を発揮するという、衝撃的で鮮烈な一篇。
本篇の主人公=
灰原由宇は、最後の「原爆の局」において再登場しますので、お見逃しなく。
6篇中、最もスリリングを味わったのは
「清められた卓」。ゲームは麻雀とあって競技者として4人が登場。人と人との戦いという色彩が強いので読み易いですが、肝心の勝負風景はチンプンカンプン(麻雀をやったことがないので)。
「象を飛ばした王子」の主人公は、釈尊の実子であるゴータマ・ラーフラ。何とまぁ、のひと言。しかし、釈尊父子のことまでゲームに結びつけるとはねぇ。

こうしたゲームをよく知っていれば深く楽しめることができるのかもしれませんが、あいにく私は門外漢。したがってストーリィの醍醐味がまるで判らないのですが、作者の意欲を買っての評価としました。

盤上の夜/人間の王/清められた卓/象を飛ばした王子/千年の虚空/原爆の局

 


  

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