宮部みゆき作品のページ No.


1960年東京生。87年「我らが隣人の犯罪」にて第26回オール読物推理小説新人賞、88年「かまいたち」にて第12回歴史文学賞佳作入選、89年「魔術はささやく」にて第2回日本推理サスペンス大賞、92年「龍は眠る」にて第45回日本推理作家協会賞長篇部門、同年「本所深川ふしぎ草紙」にて第13回吉川英治文学新人賞、93年「火車」にて第6回山本周五郎賞、97年「蒲生邸事件」にて第18回日本SF大賞、99年「理由」にて 第120回直木賞、2001〜02年「模倣犯」にて第55回毎日出版文化賞特別賞・第5回司馬遼太郎賞・第52回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、07年「名もなき毒」にて第41回吉川英治文学賞を受賞。
また、08年英語版「BRAVE STORY」にてThe Batchelder Awardを受賞。


1.
魔術はささやく

2.レベル7

3.龍は眠る

4.本所深川ふしぎ草紙

5.火車

6.とり残されて

7.淋しい狩人

8.震える岩―霊験お初捕物控―

9.蒲生邸事件

10.鳩笛草

11.クロスファイア


ぼんくら、模倣犯、ドリームバスター、あかんべえ、誰か、日暮らし、孤宿の人、名もなき毒、楽園

 → 宮部みゆき作品ページ No.2


おそろし、英雄の書、小暮写眞館、あんじゅう、ばんば憑き、おまえさん、ソロモンの偽証(第1〜3部)、桜ほうさら

 → 宮部みゆき作品ページ No.3


泣き童子、ペテロの葬列、荒神、悲嘆の門、過ぎ去りし王国の城、希望荘、三鬼、この世の春、あやかし草紙、昨日がなければ明日もない

 → 宮部みゆき作品ページ No.4

  


  

1.

●「魔術はささやく」● ★★   日本推理サスペンス大賞

  

1989年
新潮文庫

 

1993/11/07

火車」のような緊張感とスリルはなかったけれども、逆によくまとまっている作品と言えます。父親の失踪、菅野洋子の死、謎の電話等、“謎”がふんだんにあることがかえって、謎の大きさを小さくしてしまったような印象があります。まとまりの良さ、というのもその為でしょうか。
メインストーリィは、謎解きというより、主人公守という少年の成長にあったように思います。父親の犯罪からの周囲の白い眼、また彼を応援する人々。同級生の“あねご”の存在は出色、女性作家らしいヒットだったと思います。
もう暫く宮部作品を読んでみよう、と思わせた作品でした。

  

2.

●「レベル7」● 

  

1990年
新潮文庫

 

1993/11/28

文庫裏表紙の宣伝文句から期待するような面白さはありませんでした。
行方不明になった女の子と、記憶を失ってあるアパートの一室で目覚めた若い男女。女の子を探すストーリィと、若い男女一組の自分達の謎を探すという、二つの流れからストーリィが交互に展開、最後に辿り着く謎はひとつ、という筋立て。ストーリィを複雑に、不可解にした割に、謎はたいしたことなかった。「レベル7へ行くともう戻れない」というセリフはミステリアスですが、正体はなんてことないなぁ。
出来、不出来のはっきりしてしまう作家なのかもしれない、と思った作品でした。

  

3.

●「龍は眠る」● ★★★   日本推理作家協会賞


龍は眠る画像

1991年
出版芸術社刊

新潮文庫化

1993/11/28

読み応えある面白さ。
最初は何のストーリィを書こうとしているのか疑問に思ったのですが、読了時にはともかく面白かった、という一言に尽きます。
ストーリィとしては、前半に超能力者の問題を取り上げ、後半では主人公に対する脅迫、誘拐という事件の解決を超能力者にからめて書き上げる、という欲張りなもの。
宮部さんの特徴として、ちょっとした社会問題を取り入れるという工夫は魔術はささやく」「火車と同様なものです。
登場人物がやや空想的であるのは否めませんが、主人公・高坂昭吾、生駒、稲村慎司、織田直也、三村七恵も、それぞれに魅力的です。

※典型的な結婚・主婦という定石コースを宮部さんは嫌っているのかなぁ、と感じる部分があるのですが、実際はどうなのでしょう。

  

4.

●「本所深川ふしぎ草紙」● ★☆     吉川英治文学新人賞


1991年
新人物往来社刊


1993/12/11

本所深川の七不思議を題材にした連作短編。各々ミステリー仕立てになっているのが宮部さんらしいところ。探偵役は、“回向院の茂七”という十手持ち。
ミステリー、サスペンスの舞台、ストーリィの範囲を幅広く選択できるのは、宮部さんの長所だと思うのですが、江戸の情緒が感じられたかというと、やはり薄いです。
本作品は、ミステリーの要素と人情話をうまく取り合わせた、良くできている短篇集という印象です。

  

5.

●「火 車」● ★★★   山本周五郎賞

火車画像

1992年
双葉社刊

1998年02月
新潮文庫

1993/11/07

初めて読んだ宮部作品です。1992年度ミステリー・ベストワン作品とのこと。一気呵成に読みました。

消費者金融→自己破産という、現代における社会問題をネタにしたこと、真相を探り、徐々に謎を解明していくというスリルと面白さの醍醐味を堪能させてくれたこと、犯人の女性像へのつきない興味、それが魅力でした。登場人物の掘り下げ不足に物足りない感じもあったのですが、それを十分補って余りあるストーリィ展開でした。
最後の場面は実に忘れ難いものです。同時にその場面をもっと読みたい、という欲求もあり、物足りなさも感じてしまいました。宮部さんの手中のはまった、ということでしょうね。

同じような失踪話を片岡義男(道順は彼女に訊く」)さんが書くとまるで違ったストーリィになります。よかったら読み比べてみませんか。

  

6.

「とり残されて」● ★☆


1992年
文春文庫


1996/10/10

短篇集7作。「とり残されて」「たった一人」が印象的。
両方とも同一アイデアに基づくストーリィなのですが、よくこんなアイデア、ストーリィを思いつくなあと感心してしまいます。でも、一方で、読了後はそれっきりで終わってしまう、その後の余韻というか膨らみというものを余り感じない、という物足りなさも あります。

  

7.

●「淋しい狩人」● 


1993年
新潮社刊


1993/12/19

連作短編。あまり面白くなかった。読み始めてすぐに読むのをやめようか、とさえ思いました。探偵役は、東京・荒川土手下の古本屋の老主人と孫の稔の二人。
古本屋というのは、本好きの人間からすると一度は描いてみたい小説の舞台であるような気がします。でも、古本屋さんは人が集まるという場所ではないのですから、そうした舞台にミステリーを結び付けるのは、余りに制約がありすぎるような気がします。本書でも、ストーリィにこじつけを感じてしまいました。

  

8.

●「震える岩霊験お初捕物控」● 

1993年
新人物往来社刊

1993/12/21

赤穂浪士討入りの10年後の江戸を舞台にしたミステリー。捕物控と言いつつも、過去の怨霊と、それを迎え撃つ超能力者・お初との戦い、とは言えない、“遭遇”程度のストーリィ。
宮部作品はもういいや、と思った作品でした。宮部ファンの皆さん、ゴメンナサイ。

  

9.

●「蒲生邸事件」● 

  

1996年10月
毎日新聞社刊

1999年1月
光文社再刊

2000年10月
文春文庫化



2000/05/02

主人公・尾崎孝史は、予備校受験のため都心の永田町にあるホテルに宿泊していましたが、ホテル火災に遭って逃げ場をふさがれてしまいます。その窮地に孝史を救ってくれたのは、なんと時間旅行者でした。その結果として、孝史は2・26事件が勃発した昭和11年にタイム・トリップしてしまいます。

歴史上大きな転換期となった大事件の最中に帝都に降り立った孝史は、蒲生陸軍大将の邸宅で殺人事件に巻き込まれることになります。というわけで、本書はタイム・トリップとミステリが混じり合った作品です。

ただ、面白みとしてはかなり物足りないです。2・26事件の最中という緊迫感は薄いし、謎解きもあまり大したものではない、また歴史を知らしめるという力の入ったものでもありません。さらに、主人公・孝史が、やたら蒲生邸のふきという若い女中にこだわるのも、納得感に欠けます。

※なお、旧蒲生邸跡にたっているという上記平河町ホテルの大規模火災は、ホテル・ニュージャパンをモデルにしているもののようです。

  

10.

●「鳩笛草」● ★☆


鳩笛草画像

1995年09月
光文社刊

2000年04月
光文社文庫
(590円+税)



2000/04/13

超能力を持つ3人の女性をそれぞれ主人公とした3篇を収録。
一時飽きがきてずっと遠ざかっていたのですが、久しぶりに宮部作品を読んだところ、それなりに楽しめました。
超能力をもった主人公と言っても、3作品はそれぞれ趣を異にします。

「朽ちてゆくまで」は、主人公・麻生智子が失った予知能力を取り戻すストーリィですし、「鳩笛草」は、主人公である女刑事・本田貴子がその透視能力を失っていくストーリィ。
正反対にあるストーリィのようですけれど、2人ともごく普通の女性として生きながら、他の人にない能力をちょっと余計に持って生まれてきた、という設定で共通しています。超能力と寄り添うように生きてきた、あるいはこれから生きていく中において、2人が抱えた葛藤を描いています。したがって、2人に対して共感を覚えるようなストーリィ。

それに対して「燔祭」念力放火能力を持った主人公・青木淳子のストーリィは鮮烈。龍は眠るの主人公たちを思い出させられます。また、彼女が自らを指して言う、“装填された銃”という言葉のイメージも強烈! 
彼女は、超能力者としてのみ生きる女性であり、その為に世間から隠れるようにして生きる道を選んでいます。哀しいような、切なくなるようなストーリィ。

「燔祭」が印象的である理由は、主人公の設定だけではなく、ストーリィ構成の見事さにもあります。彼女の能力を知る多田一樹の回想の中で、霧の中から現れるように淳子の姿が徐々に浮かび上がっていく展開は、幻想的でとても魅せられます。火車と似ているところがあります。「燔祭」とクロスファイアの青木淳子、果たしてどちらが魅力的なのでしょうか。

朽ちてゆくまで燔祭★★/鳩笛草★☆

  

11.

●「クロスファイア」● ★☆


クロスファイア画像

1998年10月
光文社刊

(上下)
1998年12月
1999年01月

2002年09月
光文社文庫
(上下)


2000/04/15
2000/05/08

鳩笛草収録の「燔祭」に登場した超能力者(念力放火能力)、青木淳子を主人公としたサスペンス・ストーリィ。

「燔祭」が、主人公・多田一樹による妹への回想と淳子への回想を織り交ぜた幻想的な作品だったのに対して、本書は冒頭から淳子が念力放火を炸裂させており、バイオレンス・アクションと言いたいような直線的なストーリィになっています。その点では、「燔祭」の方に情緒があって私好みです。
ただ、本書ストーリィも、上巻が極めて攻撃的なものであるのに対して、下巻では変わってくるような気配があります。最後まで読まないと、この作品への評価は下せないでしょう。

下巻を読むまでに時間があいてしまったので、一気に読んだ場合と感想は異なるのかもしれません。
上巻が冒頭からスリリングなものであったのに対し、下巻では、(子供だましのような組織である)ガーディアン青木淳子、そして青木淳子自身の半生が軸となって展開します。その分、厳しい評価になりますが、月並みなストーリィになってしまったと感じました。

読み終えて後に振り返ると、青木淳子のストーリィは「燔祭」こそが鮮烈かつ魅力的であって、この「クロスファイア」は単に青木淳子という登場人物に片をつけるためのストーリィに過ぎないのではないか、と思われてきます。
それ以外にないという結末ではあるのですが、でも、物足りなさがやはり残ります。

   

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