光本正記
(みつもとまさき)作品のページ


1978年岡山県岡山市生。19歳の時大阪に出て映像制作やコピーライターをはじめ様々な職を経て、現在はウェブページライター。2012年「紅葉街駅前自殺センター」にて第8回新潮エンターテインメント大賞(選考委員:畠中恵)を受賞。

  


     

「紅葉街駅前自殺センター ★☆      新潮エンターテイメント大賞




2013年01月
新潮社刊

(1500円+税)

  

2013/02/12

  

amazon.co.jp

5回の面接と身辺調査を経れば自殺の支援を受けることができるという“自殺センター”が設立された近未来の日本を舞台にしたストーリィ。
国が自殺を公認するということの是非を巡って大きな議論を呼びそうですが、本書冒頭、国内外で大反対があったものの実行してみれば結果的に日本の自殺死率を引き下げるという効果を生んでいると説明されます。

さて主人公は34歳の土井洋介。6年前に1歳の息子を通り魔に斬殺され、それが原因で妻とも別れた主人公はもはや生きる目的を見いだせず、会社も辞めて紅葉街駅前自殺センターの扉を叩きます。そこから始まるストーリィ。
まずストーリィ設定が面白く、自殺へ向けてどう段取りが進んでいくのか、ここに至るまでにどんな経緯が主人公にあったのか、という点が興味どころ。
そして5回の面接をくぐり抜けた主人公は、遂に自殺の段階を迎えるのですが・・・・。

まぁ一部、予想された展開もあるにはあったのですが、それを越えて結末は一気に急転回。
しかし余りに展開が唐突で、あっけに取られている内に終わってしまったという印象。率直に言って、拍子抜け、という気持ちです。
また、主人公が自殺センターに通う一方、この街には“
切断魔”と呼ばれる連続殺人鬼が潜んでいるという事実が告げられます。何故切断魔を登場させる必要があるのか、そこはかなり無理があるようです。

ストーリィはともかく、国家が個人の自殺を支援するということの是非、自殺したいという本人の苦しい気持ちを理解せず、生きることだけをただ強制することの是非等々、世間一般の社会常識に一石を投じた点に本書の意味があるように思います。

一回目/二回目/三回目/四回目/フィルティアルスとエレベーターマン/さよなら/五回目/白の夢/殺人者の夢/はじまり

 


  

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