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2.光媒の花 3.月と蟹 5.笑うハーレキン 6.スタフ 7.雷神 |
●「片眼の猿」● ★ |
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2009年07月
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超人的な能力をもつ探偵たちによるサスペンス・ミステリ? 冒頭に登場する会社員同士の会話から、本書における主要な登場人物たちの特異なキャラクターが印象付けられます。 三梨が依頼を受けていた調査先の会社で殺人事件が発生する。そして冬絵の不審な行動。そして行き着く先は、探偵会社同士の争い。事件の謎だけでなく、本書の登場人物たち自体が謎を背負っています。 主人公を囲む登場人物たちとの仲間の輪は楽しいものですが、それを活かすならシリーズものにする他ないと思う次第。 |
●「光媒の花」● ★★ 山本周五郎賞 |
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2012年10月
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人が自分のためではなく、人のために嘘をつくとき、そこには大切な何かを守ろうとする理由がある。そしてその嘘には、何かの哀しさが漂う。 道尾さんというとミステリ、サスペンスというイメージなのですが、本書はそのどちらでもありません。でも、各篇ともサスペンスチックな仕掛けがあるからこそ惹き付けられる、という印象です。 「隠れ鬼」:認知症の母親を抱えた中年の息子が知った衝撃。 隠れ鬼/虫送り/冬の蝶/春の蝶/風媒花/遠い光 |
●「月と蟹」● ★★ 直木賞 |
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2013年07月
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海辺の町に住む小学生3人、彼らが密かに始めた儀式は、ヤドカリを「ヤドカミ様」という神様に見立てて、願い事をするというもの。願ったことは本当に叶ったのか。 次第に募ってく追い詰められ感、圧迫感が流石。凄い!の一言です。 主人公たち3人が「ヤドカミ様」という神を作って願いをかけるという行為の根底には、各々が抱えた鬱屈にあることが次第に明らかになっていきます。 |
●「カササギたちの四季」● ★☆ |
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2014年02月
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紹介記事を読んで面白そうだと思ったのですが、私としてはそれ程面白いとは思わなかった、というのが率直な感想。 開店して2年間、今も赤字続きの零細リサイクルショップ・カササギ。 以下、ネタバレ的なところがありますので、ご注意ください。 謎めいた事件にぶつかると、喜び勇んで推理をめぐらす華沙々木、ところがいつもとんだ的外れ。おかげで、その度に苦労させられるのは、日暮。 趣向自体には喝采するものの、ストーリィがそれと同じくらい面白いとは限らない、というのが難しいところ。 春−鵲の橋/夏−蜩の川/秋−南の絆/冬−橘の寺 |
5. | |
「笑うハーレキン The Laughing Harlequin」 ★★ |
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愛する息子を失い、妻に去られ、会社も潰れて今は中古トラック一つ、ホームレスの家具職人にまで落ちた東口太一を主人公にした、人生再生ストーリィ。 東口が名付けた厄病神とは一体どんな存在なのか。そして東口が抱え込んでいる心の痛みとは何なのか。さらに東口に近づいてきた西木奈々恵の目的は何処にあるのか。 余りに辛いことが重なると、人は過去から目を背け、その事実から逃げようとするもの。 |
6. | |
「スタフ staph」 ★☆ |
2019年09月
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浮気した夫と離婚した後、ワゴン車での弁当販売を始めた掛川夏都(なつ)が人違いにより巻き込まれた騒動は、話題の中学生アイドル=カグヤが姉のため、スキャンダルになりかけない携帯メールを削除しようとしたことから始まったもの。 看護師として海外で援助活動に働く姉から預かって同居している中学2年の甥=智弥や、その智弥が通う学習塾の講師=菅沼まで巻き込む結果になっただけでなく、事件は夏都の予想を越えて大きなものとなっていく・・・。 「想像をはるかに超えたラストで話題騒然となった週刊文春連載作」という紹介文に興味をそそられ、久々に道尾作品を読んだのですが、結果としてはがっかりした、というのが正直な感想。 ごく普通人であるバツイチ女性が巻き込まれた事件はどこまで広がっていくのかというスリリンな様相を見せたというのに、終盤でそれはあっさりと決着が付き、本当の真相は○○○○にあったと知らされる訳ですが、何だかなぁ・・・。 本書を面白いと感じるかどうかは、本ストーリィから浮かび上がった問題を読み手がどう受け止め、どう解釈するか次第によると思います。 私について言えば、あまり感慨を受けませんでしたが。 |
7. | |
「雷 神」 ★★ |
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2024年03月
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埼玉で小料理屋を営む藤原幸人に突然掛かって来た一本の脅迫電話。それは大事な家族を傷つけかねないものだった。 それが機となって幸人と姉の亜沙実は、19歳になった娘の夕見を連れ、30年前に亡父と共に逃げ出してきたかつての故郷=新潟県羽田上村へ向かうことになります。 31年前、2人の母親は“神鳴講”という地元祭りの前日、冷たい川の中に倒れているのが見つかり、それが原因となって死去。 そしてその翌年、村の有力者4人が祭りで出された雷電汁に入れられていた毒キノコに当たり、2人が死去するという事件が起きます。その犯人と疑われたのは、亡き父親の南人。 そして南人は2人の子供を守るため、村を出たという経緯。 幸人、亜沙実、夕見の3人は祭りを取材している編集者・ライター・カメラマンと偽り事件を探ろうとしますが・・・。 次々と思わぬ事態が起きていく為、少しも飽きるところがありません。 真相を追及するというミステリ趣向ではあるのですが、展開を楽しむストーリィと言って良い、と思います。 3人が話を聞いて回る村人たちにリアル感があるのが良い。 それにしても、真相と結末にはやはり驚かされます。 主人公たちが再び平穏な生活を取り戻せることを祈るばかり、という気持ちになります。 1.平穏の終幕と脅迫/2.記憶の崩壊と空白/3.真相の解明と雷撃/4.怨嗟の文字と殺人/5.映像の暗示と遺体/6.最後の殺意と結末/終幕.雷神 |