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「羅城門に啼く」 ★★ 京都文学賞最優秀賞 |
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2024年04月
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人々が疫病と飢餓に苦しむ、平安中期の京が舞台。 主人公のイチは、拾われて悲田院で育つものの、やがて奴婢として売られ、抜け出せない現実を怨み、友を裏切る。 そのため左目に焼き鏝を押し当てられるという非道の扱いをされて放逐される。 世の中に転がり出たイチの生きる術は悪党になるしかない。 油商人の家に仲間と押し入ったものの捕らえられ、殺人の罪で首を落とされるところ、空也上人に救われる。 それから空也上人の後をついて回り、指示されるまま亡骸を墓場に運ぶ手伝いを続けていたイチですが、自分がその不幸を作った相手である娘キクと出会い、身重で行き先のない娘を世話するようになります。しかし・・・・。 一旦悪党の道に落ちたものは、2度と変われないのか。 悪党がその犯した罪を許されることはないのか。 空也上人がイチに教えることは、「欲するな、与えよ」ということに尽きます。 しかし、一度犯した罪にイチは付きまとわれ続けます。 悪党であったイチの再生ストーリィ。 空也上人の教えは、どの宗教も目指す究極の境地の筈ですが、それを実行することは難しい。 観念からイチを導くのが空也上人なら、現実世界でイチを許す存在はキクであるというべきでしょう。 最後、人間の道へ踏み出そうとするイチの身を祈りたい気持ちになります。 |