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「バリ山行(さんこう)」 ★★☆ 芥川賞 | |
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本作題名を聞いたとき、インドネシアのバリ島、と思ってしまったのですが、登山で言う“バリエーションルート”の「バリ」でした。 ちなみにバリエーションルートとは、一般登山道ではない登山道をルートファインディングしながら歩くこと、だそうです。 主人公は波多、保険会社で働く妻と幼い娘をもつ会社員で、前の会社をリストラされ、3年前に現在の新田テック建装に転職したばかり。 事務の女子社員に誘われて、会社の登山サークルに加わった処、登山の魅力に惹きこまれます。 一方、その会社で他の社員と馴れ合わず孤立している存在が、ベテラン社員の妻鹿(めが)。その妻鹿、毎週のように登山しているらしいのですが、バリなのだと。 ある時、仕事上のトラブルを妻鹿に助けてもらったのを機に、波多は妻鹿のバリ山行に同行させてもらうのですが・・・。 よく登山は人生になぞらえられますが、本作で対比されるのは、バリ山行と会社人生。 実際のバリがどの程度なのか皆目わかりませんが、波多が同行した妻鹿のバリ山行は凄まじい。スリル、サスペンス感とも、満点です。 会社における危惧や不安は偽物で、バリでの危機だけが本物なのか。バリは危険であるからこそ楽しいのか。 それらについていろいろ考えてみる、そこに本作の面白さがあるように思います。 |