松永K三蔵
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1980年生、関西学院大学卒。兵庫県西宮市在住。2021年「カメオ」にて第64回群像新人文学賞優秀作を受賞し作家デビュー。24年「バリ山行」にて 第171回芥川賞を受賞。

  


       

「バリ山行(さんこう) ★★☆       芥川賞


バリ山行

2024年07月
講談社
(1600円+税)



2024/09/05



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本作題名を聞いたとき、インドネシアのバリ島、と思ってしまったのですが、登山で言う“バリエーションルート”の「バリ」でした。
ちなみにバリエーションルートとは、一般登山道ではない登山道をルートファインディングしながら歩くこと、だそうです。

主人公は
波多、保険会社で働く妻と幼い娘をもつ会社員で、前の会社をリストラされ、3年前に現在の新田テック建装に転職したばかり。
事務の女子社員に誘われて、会社の登山サークルに加わった処、登山の魅力に惹きこまれます。
一方、その会社で他の社員と馴れ合わず孤立している存在が、ベテラン社員の
妻鹿(めが)。その妻鹿、毎週のように登山しているらしいのですが、バリなのだと。
ある時、仕事上のトラブルを妻鹿に助けてもらったのを機に、波多は妻鹿のバリ山行に同行させてもらうのですが・・・。

よく登山は人生になぞらえられますが、本作で対比されるのは、バリ山行と会社人生。
実際のバリがどの程度なのか皆目わかりませんが、波多が同行した妻鹿のバリ山行は凄まじい。スリル、サスペンス感とも、満点です。

会社における危惧や不安は偽物で、バリでの危機だけが本物なのか。バリは危険であるからこそ楽しいのか。
それらについていろいろ考えてみる、そこに本作の面白さがあるように思います。

           


  

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