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1.ひよっこ茶人の玉手箱(文庫改題:ひょっこ茶人、茶会へまいる) |
●「ひよっこ茶人の玉手箱」● ★★☆ |
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2011年08月
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「雨にもまけず粗茶一服」でぐっとお茶の世界に惹きつけられたこと、松村さんの他の本も読みたいと思ったことから、自然に手が出た一冊。 お茶の世界について全く無知な私ですが、同じく無知な状況から手探りでお茶の世界に入り込んでいった松村さんが、先輩として手取り足取りで案内してくれるところが有り難い。ふむふむ、そうかぁこれがお茶の世界だったのかァと、納得しつつ読み進むことができます。 (追伸)京都の和菓子の美味しそうなこと。大阪単身赴任の間に食べ回っておけば良かった(後悔)。お公家スタイルで茶会に出席する人が、本当にいるとは思わなかった(驚き)。 茶の湯はこわくない!?/ひよっこ茶人、茶会へまいる/ひよっこ茶人、ちょっと開眼/ML茶の湯ワンダーランド |
●「雨にもまけず粗茶一服」● ★★☆ |
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2008年11月
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読み始めたら止まらなくなり、一気に読み上げた青春エンターテイメントの傑作! 主人公は、武家茶道(剣+弓+茶)の中小家元・坂東巴流の跡継ぎ息子、友衛遊馬。 登場人物はいずれも個性派揃い。弟の行馬、袴姿の女性門弟=カンナ、調子のいい茶道好き青年=哲哉、正体のつかみきれない住職=不穏、公家姿の高校教師=幸麿、等々。変人と言うべきかもしれない彼等ですが、わざとらしさのないところが良い。 |
●「風にもまけず粗茶一服」● ★★ |
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2014年01月
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「雨にもまけず粗茶一服」の続編。 前作の最後で主人公=友衛遊馬(あすま)は、修行のため延暦寺の一山である<天鏡院>の門を叩きますが、本書はその天鏡院での修行ぶりが中心となるストーリィ。 ところがその天鏡院、とんでもない処。 住職である柴門老師が比叡山千日回峰を満行した行者(阿闍梨)である所為か、食料はすべて自給自足、燃料も自ら薪を用意して、といった具合。 そんな状況でも遊馬がそこに留まれたのは、前作での成長の証でしょうか。 前作を修行時代の初級編とするならば、本作は中級編&上級編。中級と上級の違いは、他人の立場を考え、実のある意見をすることができるようになった、というところ。 前作のような、初めて知る奇妙な茶人世界という、絶妙の面白さはもう味わえませんが、遊馬を初めとして登場人物らのその後を様子を知ることができるのは嬉しいこと。 また、遊馬が成人になった記念として出場した<三十三間堂大的全国大会>、山での行者のような暮らしぶりが読み処です。 前作もそうでしたけれど、最後の締め方が上手い。次への新しい飛躍を感じさせられて、胸がはずむ気がします。 本作品の面白さは、前作を読んでいて初めて味わえるもの。まずは前作を読んでみることをお勧めします。 なお、「雪にもまけず粗茶一服」は、遊馬の周辺人物を主人公にした3篇。武藤カンナの意外な出生の秘密が明らかになります。 風にもまけず粗茶一服/雪にもまけず粗茶一服 |
「花のお江戸で粗茶一服」 ★★ |
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2020年05月
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“粗茶一服”シリーズ第3弾。 勝手に前2作で完結と思い込んでいたので、第3弾?と戸惑うところがあったのですが、読めばやはり心弾むように楽しくなってくる、ユニークなお茶&武道を究めんとする青春ストーリィ。 「雨にも負けず」と「風にも負けず」が、これからどんな道を進めば良いのかと主人公=友衛遊馬が揺れ惑う“青春篇(前期・後期)”という感じだったのに対し、さしづめ本作は“青年篇”といった感じです。 京都から東京の実家に戻り、ようやく遊馬の進む道も定まったかと思えたのですが、相変わらず迷いっぱなし。 それでもうろうろと迷い、惑い、蛇行しながらも、少しずつ前進していく様子が見られます。 当然ながらストーリィの多くは、友衛家内、坂東巴流内の問題に費やされますので、<茶・弓・剣>の三道帰一というユニークな面を持つ一方、弱小流派の苦労も描かれていて、たっぷり楽しめます。 ただ、遊馬がジタバタしている間に、内弟子となっていた遊馬のガールフレンド=桂木佐保の方がさっさと成長を遂げて巣立っていってしまう対照的な姿は、何と言ってよいやら(笑)。 でも、ふらふらしているように見えて、いつの間にか弟子たち等々から慕われているらしいところが意外に頼もしい。 割り切ってさっさと進むのではなく、試行錯誤しながら得心が行くまで迷い続けるという遊馬の在り方が、青年として正統な姿に思えて好感を抱きます。 とにかく様々な人物が遊馬の周りで蠢いているところが、本シリーズの楽しさ。つねに周りは賑やかです。 このシリーズ、まだまだ後がありそうです。楽しみ、楽しみ。 序/1.風太郎勿食(はたらかざるものくうべからず)の段/2.回転回転回(おもえばいつものでんぐりがえし)の段/3.神無月茶事曲者の段/4.電視机(テレビ)桟敷の段/5.真盛(まさか)江戸桜の段/6.夏雪(きせつはずれの)菊人形の段/7.零点(ひくにひかれぬ)青不動の段/8.如花自在野(はなはのにあるように)の段/9.風神雷神の段/10.墨田川藍憶(あいのおもいで)の段/11.驕春美少女(おごりはるのうつくしきかな)の段/12.娘道場掃除の段/13.禍福初春(めでたくもありめでたくもなし)の段/14.伊織参上の段/15.誰遺一片羽(だれがかたみのひとひらのはね)の段/16.茶事如合戦(ちゃじはかっせんのごとく)の段/17.三代貫茶此処路(みよをつらぬくちゃのこころ)の段/18.矢勝背和式秋空(やがてせわしきあきのそら)の段/19.雲居雁泣別(くもいのかりなみだのわかれ)の段/20.出梅不時茶(あめあがりときしらずのちゃ)の段/21.坂東巴流在此(ここにあり)の段/22.冬月照武者(つわものてらすふゆのつき)の段/23.天地人各事情(それぞれのじじょう)の段/24.藁屋(わらやに)名馬の段/結 |
「彼方此方(おちこち)の空に粗茶一服」 ★★ | |
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シリーズ第4弾にして、完結編とのこと。 本書は、主要登場人物のその後、といった内容です。 相変わらずそれぞれに楽しめますが、男性陣より女性陣の方が活躍しているという印象が強い。 予想を超えて愉快だったのは、桂木佐保。時々思い切ったことをしますからね〜、彼女は。 遊馬の弟子で<華道水元流>家元令嬢である水川珠樹の、英国留学苦労譚も楽しい。リアルな現実ですね。 個性的な女性たちの中でも傑物ぶりを発揮したのが、カンナと幸麿の娘である今出川希(のぞみ)、小四生。さすがはカンナの娘、母親に似て武闘派のようです。 また、高田翠と幼馴染である坊城哲也との、まるで漫才といった感じのやり取りが愉快この上なし。笑えます。 ・「三波呉服店の段」:友衛家近くの呉服店は開店休業状態。その老店主に再びやる気を出させたのは・・・。 ・「本所鴨騒動の段」:友衛家の内弟子となった伊織(本名:宮本一郎)、まわりと打ち解けられず、またもや孤立? ・「英国溜息物語の段」:水川珠樹、英国留学の苦労譚。 ・「翠初夏洛北の段」:翠と久美、久美の結婚前に再会。なお、その後の翠と哲也の会話がすこぶる愉快。お愉しみに。 ・「今昔嫁姑譚の段」:遊馬の母である公子、嫁となった佐保を前にして、姑=菊路とのあれこれを。佐保にも悩みあり。 ・「今出川家御息女の段」:今出川希、小四。いちいち絡んでくる同級生男子に対し、ついに・・・。 ・「水無月松葉杖の段」:老女を庇って階段を転落し脚を骨折した遊馬、祖父・父から受け身がなってないと叱責されるが。 1.三波呉服店の段/2.本所鴨騒動の段/3.英国溜息物語の段/4.翠(みどりなす)初夏洛北の段/5.今昔嫁姑譚(ばなし)の段/6.今出川家御息女の段/7.水月(あめにぬれる)松葉杖の段 |