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1.北海タイムス物語 2.猿と人間 |
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「北海タイムス物語 HOKKAI TIMES Story」 ★★★ |
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2019年11月
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司法試験から新聞記者志望に転じた野々村巡洋、あちこちの新聞社を落ち続け、唯一合格した北海道の地方紙「北海タイムス」に入社します。とりあえず一年間働いて経験を積んだら全国紙に再挑戦、という心づもり。 ところが、配属されたのは取材部署ではなく、紙面に記事の割り付けを行う“整理部”。しかも3年は修業、その間は異動できずと聞かされ悄然。 指導役を命じられた先輩社員の権藤は巡洋を厳しく指導しようとしていますが、ヤル気のない巡洋は全く身が入らず・・・。 そんな野々村巡洋を主人公とした、青春&お仕事ストーリィ。 入社して配属された部署が自分の希望と全く違っていた、なんてことはよくあること。それでも次第に心を入れ替え・・・というパターンになる筈なのですが、巡洋の拒絶反応ぶり、見栄を張る様子は、いくら主人公とはいえ見放したくなるような酷さ。 しかし、それを超えて凄まじいのは、この北海タイムス社員たちの激務ぶりと給与収入の低さ。何しろ局部長クラスでも新入社員とさして変わらず、年収2百万円程度というのですから。 妻に働いてもらわないことには社会の底辺というレベルの生活さえままならない、まして子供の教育費という問題が重くのしかかってきます・・・・・。 壮絶、過酷、いやそれ以上に凄絶!というべきなのがこの北海タイムスの社員たちの生き様。 低賃金に喘いでいようと、仕事に対する情熱、責任感の強さは男性社員であろうと女性社員であろうとまるで変わりありません。 とは言っても、こんな賃金レベルではなぁ・・・・。 終盤、正念場に立たされた巡洋はどう行動するのか。 それから後の怒涛のような行動ぶりもまた凄いのですが、これまた常軌を逸しているというように凄絶、迫力いっぱい。 北海タイムスの社員たちが演じるこのドラマの凄絶さ、狂気、迫力は、ハードボイルド小説のそれを遥かに凌ぐと言って過言ではありません。 青春&お仕事小説、それに加えて“北海タイムス”の当時の姿を描く記念碑的な作品と言って良いでしょう。是非お薦め! 1.雪の舞う新聞社/2.酒と女と、人事が踊る/3.運命の配属先は/4.この会社を愛せますか/5.肉や刺身が食べたい/6.権藤権藤、雨、権藤/7.貧しい新聞記者/8.殴って会社クビになれ!/9.国際マラソンと花火大会/10.北海道の短い夏に/11.ささやく講義/12.さよならなんて言わないで/13.北海タイムスとともに |
2. | |
「猿と人間 Monkeys & Humans」 ★☆ |
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高一の英輔は、父親の誠一郎に連れられ、人里離れた山中へキャンプ含みで鴨猟にやってきます。 父親は元Jリーガーで、今はジビエレストランを経営。両親は英輔が小五の時に離婚していて、英輔は母親と暮らしている。 英輔、キャンプ場所に着いた時から、野性の生き物の不気味な息遣いを感じており、不安。 この山中は今や、他の地域から移動してきた猿が 850頭も集まっており、黒猿と呼ばれる巨大な猿 が全頭を支配しているのだという。 今この近くにいるのは、英輔父子と、集落でただ一人の住人となった霜田良枝・83歳、そして東農大野生動物学研究室の調査チーム4人(教授・専任講師・女子学生2人)のみ。 その夜、狂暴化した猿たちが彼らに襲い掛かってくるという、恐怖の惨劇が始まります。 果たして、彼らのうち何人かは、猿たちの襲撃から生き延びることができるのでしょうか。 本作は、そうした恐怖の事態からの脱出ストーリィ。 いやあ、本当に怖いです。相手は、人間と同様な身体を持ち、俊敏性も力も人間よりずっと強力な猿ですし、しかも 850頭と際限なし。 この恐怖感、荻原浩「楽園の真下」に通じるなぁと、ふと思い出しました。どちらがより怖いか、など意味ないことと思いますが、「楽園の真下」の方が本作より怖かったような気がします。 途中、非現実的な箇所もありますが、この恐怖感は本物です。 1.獣たちの気配/2.老婆の記憶/3.猿の研究者/4.数百頭の襲撃/5.孤独な敗走/6.凍える草叢で/7.猿と人間の戦い |