増田俊也
(としなり)作品のページ


1965年生、北海道大学を中退し北海タイムス社の記者。2年後中日新聞に転職。中日在職中の2006年「シャトゥーンヒグマの森」にて「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」にて大宅賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。16年中日新聞社を早期退職、作家専業。

  


       

「北海タイムス物語 HOKKAI TIMES Story ★★★


北海タイムス物語

2017年04月
新潮社刊

(1700円+税)




2017/06/15




amazon.co.jp

司法試験から新聞記者志望に転じた野々村巡洋、あちこちの新聞社を落ち続け、唯一合格した北海道の地方紙「北海タイムス」に入社します。とりあえず一年間働いて経験を積んだら全国紙に再挑戦、という心づもり。
ところが、配属されたのは取材部署ではなく、紙面に記事の割り付けを行う
“整理部”。しかも3年は修業、その間は異動できずと聞かされ悄然。
指導役を命じられた先輩社員の
権藤は巡洋を厳しく指導しようとしていますが、ヤル気のない巡洋は全く身が入らず・・・。

そんな野々村巡洋を主人公とした、青春&お仕事ストーリィ。
入社して配属された部署が自分の希望と全く違っていた、なんてことはよくあること。それでも次第に心を入れ替え・・・というパターンになる筈なのですが、巡洋の拒絶反応ぶり、見栄を張る様子は、いくら主人公とはいえ見放したくなるような酷さ。

しかし、それを超えて凄まじいのは、この北海タイムス社員たちの激務ぶりと給与収入の低さ。何しろ局部長クラスでも新入社員とさして変わらず、年収2百万円程度というのですから。
妻に働いてもらわないことには社会の底辺というレベルの生活さえままならない、まして子供の教育費という問題が重くのしかかってきます・・・・・。

壮絶、過酷、いやそれ以上に凄絶!というべきなのがこの北海タイムスの社員たちの生き様。
低賃金に喘いでいようと、仕事に対する情熱、責任感の強さは男性社員であろうと女性社員であろうとまるで変わりありません。
とは言っても、こんな賃金レベルではなぁ・・・・。

終盤、正念場に立たされた巡洋はどう行動するのか。
それから後の怒涛のような行動ぶりもまた凄いのですが、これまた常軌を逸しているというように凄絶、迫力いっぱい。
北海タイムスの社員たちが演じるこのドラマの凄絶さ、狂気、迫力は、ハードボイルド小説のそれを遥かに凌ぐと言って過言ではありません。
青春&お仕事小説、それに加えて“北海タイムス”の当時の姿を描く記念碑的な作品と言って良いでしょう。是非お薦め!


1.雪の舞う新聞社/2.酒と女と、人事が踊る/3.運命の配属先は/4.この会社を愛せますか/5.肉や刺身が食べたい/6.権藤権藤、雨、権藤/7.貧しい新聞記者/8.殴って会社クビになれ!/9.国際マラソンと花火大会/10.北海道の短い夏に/11.ささやく講義/12.さよならなんて言わないで/13.北海タイムスとともに

  


  

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