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「ウミガメを砕く」 ★★ |
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三島由紀夫賞候補作となった「ウミガメを砕く」と、新潮新人賞を受賞した「彫刻の感想」の2篇を収録。 最近、読書でも映画でも、アイヌ絡みのものを幾つか読み、また観ているなぁと思う処ですが、「ウミガメを砕く」もアイヌ要素を含んだ作品。 「ウミガメを砕く」の主人公である夕香(ゆかる)は、北海道の海岸沿いの街に暮らす30代の独身女性。 小中と同じ相手からずっとイジメを受けた過去があり、事務職として就職した病院にもなじめず退職し、周囲から疎外感を抱いている。 そんな夕香を唯一気に掛けてくれるのは、父方の春呼(はるこ)伯母さんだけなのだが、やたらアイヌであることを主張してくる春呼おばさんを疎ましく思っている(※祖父だけがアイヌ)。 全北海道が停電になった夜、亡祖父が家に持ち帰ってきたウミガメの剥製を元運河だった公園に捨てようと、家の中から持ち出し真夜中の公園をうろつく、というストーリー。 夕香にとってウミガメの剥製は、アイヌの象徴のように感じられたのか。 夕香の心情、何かよくわからない処がありますが、いろいろなものが流れ込んできていて、衝動的といった行動に何となく面白さを覚えます。 その後に、ウミガメの剥製の所以が判明し、噴飯もの。 すべては夕香が考え過ぎていただけ、のことと感じられます。 「彫刻の感想」は、樺太に住む少数民族ウィルタの少女だったナプカが、大きな山火事の際に一人救われ、フイという名でその家族の一員となって北海道に至り、息子のあきお、孫娘の杏子と繋がっていく。資料館に学芸員として勤める杏子が、見学者からの依頼を機に<ウィルタの骨偶>と触れ合う処が印象的。 ウミガメを砕く/彫刻の感想 |