|
|
2.金閣寺に密室 3.北京原人の日 6.ミステリアス学園 8.オレンジの季節 |
●「邪馬台国はどこですか?」● ★★☆ |
|
1998/10/17 |
カウンター席だけの小さな地下の店。 登場人物は、立会者というべきバーテンダーの松永、攻撃的美人の大学助手・早乙女静香、それに対する怪しげな市井歴史家の宮田六郎。そして温厚かつ冷静な大学教授の三谷敦彦。 主題である奇想天外な歴史解釈が魅力であるのは勿論なのですが、静香女史のボルテージが急上昇していく様を見ているのも楽しい。さらに、折々の酒肴にも知らず知らず興味惹かれます。 無茶苦茶な論理の飛躍だアと思いつつ、一方でフムフムと納得しそうになります。 悟りを開いたのはいつですか?/邪馬台国はどこですか?/聖徳太子はだれですか?/謀反の動機はなんですか?/維新が起きたのはなぜですか?/奇跡はどのようになされたのですか? |
●「とんち探偵一休さん金閣寺に密室(ひそかむろ)」● ★☆ |
|
2002年9月 2000/04/09 |
とんちの一休さんが探偵に! 歴史を探る面白さとミステリの面白さを掛け合わせ、さらに一休さんの逸話までも上手に取り込んだ、“本格歴史推理”という一冊。 ストーリィは、まず山椒太夫が京市中で虎に喰い殺されるという事件から始まります。次いで、一休さんの広く知られたとんち話の数々が、プロローグ的に語られます。 |
●「北京原人の日」● ☆ |
|
2005年4月 |
昼日中、銀座の真ん中に「空から人が降ってくるのが見えた」という出だしから、本書は始まります。 それは軍服を着た老人、しかも、歴史上の事件として知られる、消え失せた北京原人の骨の一部をもっていた、というのが本作品の謎。その謎を解き明かす、奇想天外・歴史ミステリというストーリィです。 探偵役となるのは、偶然目撃者となったカメラマン志望・山本達也、雑誌記者・天堂さゆりの2人。 事件の背景には日本陸軍・特殊部隊の存在があった、と言うと、如何にも重厚なサスペンス作品になりそうなのですが、本作品はいたって軽目。鯨さんの持ち味だと思いますが、それにしても主人公となる2人の性格も軽薄そう。 北京原人の化石の行方を追うストーリィは、ドイツと日本の軍事同盟、第二次大戦勃発、下山国鉄総裁轢死事件、さらに山下奉文将軍の財宝伝説にまで及び、面喰うほどです。それを一気に解き明かそうというのですから、如何にも鯨さんらしい作品。 ただ、内容としては奇想天外過ぎて、現実感に乏しい。あくまで作り話、という雰囲気です。 ですから、パズルを楽しむ気分で、気軽に読むのが相応しいようです。 |
●「サイコセラピスト探偵
波田煌子 なみだ研究所へようこそ!」● ★☆ |
|
2004年1月 |
セラピストを探偵役とした、ユーモア・ミステリの連作短篇集。 臨床心理士である松本清が、新たな勤務先として訪れたのは、港区六本木のメンタル・クリニック“なみだ研究所”。その所長である波田煌子は、数々の臨床実績をもつ伝説のサイコセラピスト(心理療法家)。 ところが実際会ってみると、波田煌子はトンチンカンな受け答えばかりの、22歳という実年齢より子供っぽい女性。おまけに精神分析に関する学問知識もロクにもっていない様子。それに対し、会計士小野寺久美子は30歳のグラマー美女で、余程彼女の方が女医らしいという具合。 しかし、いざ診療に至るとトボけた質問をしつつ最後に波田煌子がキラリと涙をこぼす時、彼女は全ての事情を解き明かしてしまいます。 そんな波田煌子の療法に、準国家資格をもつ松本清がいらつくのは度々のこと。ボケの波田煌子とツッコミの松本清と、冷静な小野寺久美子の3人の会話は、トリオ漫才を小説で読んでいる気分です。 その意味ではお笑い系ミステリと言って良いかもしれません。 日常ミステリの範疇ですが、波田煌子の推理にはかなり論理の飛躍があるようです。 アニマル色の涙/ニンフォマニアの涙/憑依する男の涙/時計恐怖症の涙/夢うつつの涙/ざぶとん恐怖症の涙/拍手する教師の涙/探す男の涙 |
●「九つの殺人メルヘン」● ★ |
|
2004年6月 |
デビュー作「邪馬台国はどこですか」に似た構成の連作ミステリ。ただし、解明されるのはれっきとした殺人事件です。 渋谷区にある日本酒バーに集い、語り出すのは、刑事の工藤と自称・犯罪心理学者の山内。そしてマスターも加えて、この3人はいずれも42歳。ところがそこに、大学でメルヘンを専攻しているという20歳の美人学生・桜川東子(ハルコ)が加わります。 折りしも、工藤の担当する殺人事件は、容疑者に確かなアリバイがあっていずれも未解決。ところが、東子によって簡単にアリバイは崩されていきます。 各章とも銘酒の講釈から始まり、名作童話の裏にある真相解釈が語られていくという構成は楽しいものです。時には、昭和30〜40年代にとって懐かしい話も語られ、またそれも楽しい。 マスターが繰り出す銘酒も酒の肴もホント美味しそうです。 ただ、それに比してミステリの方は物足りない。アリバイ崩しにしてもこじ付けがましい印象を受けます。 なお、各章の最後は決まったようにマスターが床に崩れ落ち、あとには空っぽになった一升瓶が残るというパターン。それが最後の章の伏線になっていたとは! 油断することなく読むべし。 ヘンゼルとグレーテル/赤ずきん/ブレーメンの音楽隊/シンデレラ/白雪姫/長靴をはいた猫/いばら姫/狼と七匹の子ヤギ/小人の靴屋 |
●「ミステリアス学園」● ★ |
|
2006年4月 |
ミステリアス学園ミステリ研究会、通称“ミスミス研”。今年その新入部員となったのが、薔薇小路亜矢花と湾田乱人の2人。 本格ミステリの定義/トリック/嵐の山荘/密室講義/アリバイ講義/ダイイング・メッセージ講義/意外な犯人 |
●「新・世界の七不思議」● ★☆ |
|
2005/09/27 |
奇想天外な日本歴史の謎解明バトルが繰り広げられた「邪馬台国はどこですか」の姉妹編というべき作品。今回の題材は、世界歴史における謎解きです。 歴史バトルの当事者となるのは前作と同じく、歴史学者の早乙女静香と雑誌ライターの宮田六郎。2人の論争に弾みをつける役どころは、バーテンダーの松永。そして、三谷教授に代わってバトルの立会者を務めるのは、古代史研究の権威で来日中のペンシルベニア大学教授のジョゼフ・ハートマン。 アトランティス大陸の不思議/ストーンヘンジの不思議/ピラミッドの不思議/ノアの方舟の不思議/始皇帝の不思議/ナスカの地上絵の不思議/モアイ像の不思議 |
●「オレンジの季節」● ★ |
|
2006/08/20 |
会社の朝礼の場、係長である主人公の立花薫は大胆にも全員の前で課長である戎怜華にプロポーズします。 合理的かつ冷静に考えると生涯獲得賃金は怜華の方が多いだろうことに間違いなし。戎家は7人の大家族にもかかわらず現在専業主婦がいない。説得されて薫は、仕事とプライドより怜華を選ぶのです。そして婿養子となり専業主夫の道へ。 と思っていたら、最後の章で読後感をひっくり返されました。何なんだ、このストーリィは!? |