くどうれいん作品のページ


本名:工藤玲音。1994年生、岩手県盛岡市出身。小説家・歌人。宮城大学事業構想学部卒。


1.氷柱の声 

2.スノードームの捨てかた 

 


                   

1.
「氷柱(つらら)の声 ★★☆


氷柱の声

2021年07月
講談社

(1350円+税)



2021/07/30



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東日本大震災発生時に高校生だった女性=加藤伊智花(いちか)を主人公とし、9つの時に分けて、震災に何らかの形で関わった人たちの思いや葛藤を連作風に綴った作品。

岩手県の女子高生(美術)、仙台で大学生、男子学生との交際、デパ地下でのバイト、石巻の海、フリーペーパーの編集部、と状況が移り変っていく中で、震災により家族を失った人、被害を免れた人、その様々な思いに触れていきます。

東京に暮らし、多少不便な思いをしただけの私があれこれ言うなどおこがましいのですが、人によって思いはそれぞれ、それを型に嵌められて他人に決めつけられてしまうことに抵抗感を抱くのは、当然のことではないかと思います。
敢えてキツイ言い方をすれば、それは部外者であることに安心している上での同上の言葉に過ぎない、と感じても不思議ないことのように思います。
とくに、型に嵌めて美化するような報道など、私も腹立たしく思いますし。

時の流れに応じて、様々な人の声、思いを素直に聞いて受け留める、そんな主人公の立ち位置が好ましく思います。

僅か 120頁という短い小説ですが、心の中に届いてくる声を感じるような作品です。
題材は東日本大震災、福島ではありますが、決してそれに限った話ではなく、広く様々な出来事に通じることであると思います。


滝の絵(2011)/Zamboa(2016)/スズランテープ(2016)/エスカレーター(2016)/石巻(2017)/春の海(2019)/鴨しゃぶ(2020年)/黒板(2021年)/桜(2021年)/あとがき

             

2.
「スノードームの捨てかた ★★


スノードームの捨てかた

2025年05月
講談社

(1550円+税)



2025/12/19



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長い人生における、ほんと一幕というべき出来事。
でもそこがどうであるかによって、人生が実りあるものになれるかどうかが決まる、と感じさせられる短編集、9篇。

いいなぁ、と感じたのは、表題作である
「スノードームの捨てかた」
登場人物は、高校華道部以来の仲間である三人の女性。営業職の絵美、看護師の怜香、美容師のさらさ(ひとりだけ既婚、3歳の男児あり)と、いずれも30歳。
怜香から婚約白紙になりました、という連絡を受けた絵美、さっそく自分の家での飲み会を設定します。
何かあればすぐ集まる、仲間空間を大事にする、そんな三人の姿に、何があってもこの三人は幸せになれる、という感じます。

「鰐のポーズ」:同じヨガ教室に通う憧れの年上女性、ようこさん。くるみ(26歳)は、偶然その秘密を知りますが・・・。
 どこまで覚悟があったのか、と言いたくなります。
「川はおぼえている」:別れた恋人との指輪の処分に迷っていたまみ子が偶然出会ったのは、宇津木という変わった男。
 そんなものだよなぁ。
「背」:美術館で監視係をしている野田朝子。声を掛けてきた黒木海人との間にロマンスが始まるような様子だったのですが、突然・・・。
 男女間では、ちょっとしたことが怖ろしい・・・。
「湯気」:プロポーズを受け容れた春奈、直してほしい処を指摘して、としきりに主人公に頼んでくる。幸せな筈なのに何となく不穏と思いきや・・・。
 思わず、ホラー?と思ってしまう不穏さ。怖ろしい。
「いくつもの窓」:3年続けた保険営業の仕事に耐えられなくなり退職した柿木みわこ。亡き祖父が趣味で描いたちぎり絵を額装しようと・・・。

スノードームの捨てかた/鰐のポーズ/川はおぼえている/背/湯気/いくつもの窓

       


   

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