鴻池留衣(るい)作品のページ


1987年埼玉県川口市生、慶應義塾大学文学部中退。2016年「二人組み」にて第48回新潮新人賞を受賞し作家デビュー。現在、出版社でアルバイト勤務。

 


                   

「ナイス・エイジ ★★


ナイス・エイジ

2018年01月
新潮社刊

(1600円+税)



2018/02/24



amazon.co.jp

中編小説2篇を収録。

表題作
「ナイス・エイジ」は、<時間旅行者をもてなすスレ>に群がる人々の中で展開するストーリィ。
主人公は
斎藤絵里、29歳、仕事はAV女優。上記スレのオフ会に「アキエ」と名乗って参加します。
そこで出会ったのは、未来から来た絵里の孫だと名乗る
進次郎という青年。そんな話を信じたのかどうか、絵里は彼を自分の部屋に連れ帰り、それから同居暮らし。
一方、上記スレの参加者たちは、本当に時間旅行者なのかどうか確かめようと、アキエと未来人
「2112」の足取りを付け狙い始めます。

良識で考えればタイムマシンとか時間旅行者など、そうあり得ることではないのが判る筈。それなのに本ストーリィではまるでそれがありうることのように追求されるばかり。
現実世界と全く別の世界がスレッド上に、そして絵里の周囲に存在しているかのようです。
思いも寄らぬ世界がいつの間にやら現実化しているのか、単なる空想時に過ぎないのか、何とも言い切れない気持ちになります。
最後は最後で、どう信じればいいのか、という幕切れ。
※三島由紀夫「美しい星」の現代版?とふと思ったりします。

新潮新人賞を受賞した
「二人組み」は、私好みの面白さ。
主人公は中学3年の
本間順太郎、結構お調子者。
そんな本間、同級生の女子でいつもろくに口のきけない
坂本ちゃん(美歩)に対し、合唱に向けて声を出す練習をしようと、週3回学校帰りに一緒にカラオケヘ。
声を出す練習から勉強の世話までと進むのですが、一方で個室に女子と2人きりとなれば、女子の身体を触りたいという欲望の抑えきれず・・・。
年頃中学生のちょっとした騒動話なのですが、善意と性欲が切り離せない本間の有り様が愉快。
痛快、かつ小気味良さがあって、私は好きです。(笑)


ナイス・エイジ/二人組み

        


   

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