2002年3月
文芸春秋刊
(1667円+税)
2002/07/19
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修学旅行で東京にやってきた主人公・徹は、宿泊先である旅館に、突然姉・朋子の訪問を受けます。
9歳年上の姉との再会は、姉が突如家出して以来のこと。
広島に帰るまでの間、徹は姉の元に泊まることになりますが、徹にとっては驚くような体験となります。
つまり、徹が同性の同級生に性的関心をもっていることを見透かされるように、姉によってあっという間に同性との性体験をさせられてしまうのです。
その後も、クラブの雇われママである朋子によってあちこちと連れ回された徹が、純朴な田舎の高校生から、一転男性同士の性愛に目覚めてしまう様子は、まるで坂道を転げ落ちるかのよう。
これで良いのだろうか? 三島由紀夫「禁色」により見知った世界とはいえ、戸惑ってしまいます。
ゲイ、オカマと、水商売の男性たちが数多く登場しますが、各々のキャラクターがとても興味深い。けれども、一番興味をそそられる人物は、けれんなく徹を性愛の世界に誘い、一方で水商売の厳しさもしつけようとする、姉の朋子です。
所詮、徹は朋子の真似をしているだけのことで、朋子のような厳しさは持ち合わせていません。子供の頃そうしていたように、徹は姉の前でうさぎのダンスを踊っているだけのこと。
それにしても、最初から最後まで唖然としてしまうストーリィ。それでも、ひとつの青春記。
うさぎのダンス/カエルの唄/カナリアは歌う
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