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「つぎはぐ、さんかく」 ★★☆ ポプラ社小説新人賞 | |
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開業して一年、惣菜と珈琲の店「△」を営み、三兄姉弟だけで寄り添うようにして暮らす主人公=ヒロ(24歳)、兄=晴太(1歳上)、弟=蒼(中三)を描いた物語。 中学卒業後の進路について蒼が、この家を出て全寮制の専門学校に行きたい、と言い出したことにヒロはショックを受けます。 しかし、ヒロが3人で暮らすことに固執している風なのは何故なのか。そもそも何故3人だけで暮らしているのか、という疑問が生まれます。 その事情は徐々に明らかになっていきます。 今に至るまでにどんなことがあったのか。幼い子どもにとってそれはどんなに過酷なことだったろうと思うと、胸の詰まる思いがします。 だからこそ寄り添うように3人だけの家族として暮らしてきたヒロの気持ちも理解できるというもの。 それでも、蒼の言葉、突飛な行動により、3人それぞれが抱えて来た思いが明らかになっていきます。 家族というものが、両親がいて子供たちがいるという定型的な形だけではないことが、今はもう明らかになっています。 本作の3兄姉弟もまた一つの家族の姿ですが、それぞれが成長していけば家族の形もまた変わっていくもの。それでも家族として繋がっていられるかどうかは、3人それぞれが問われる問題なのだろうと思います。 でも、忘れていけないのは、3人を助け、温かく見守っている人たちの存在です。3人だけで生きていける訳ではないのです。 とても胸の熱くなる作品。デビュー作でこのストーリィ、質の高さは凄い。お薦めです! |