幸田真音(こうだまいん)作品のページ


1951年滋賀県生。米国系投資銀行や証券会社で、日本国債のトレーダーや大手金融法人担当の外国債券セールス等を経て、95年「回避ザ・ヘッジ」にて作家デビュー。

 


   

●「日本国債」● ★☆

 

 
2000年11月
講談社刊
上下
(各1800円+税)

 

2002/05/17

図書館の棚をふっとみたら、この本があったので迷わず借り出しました。刊行当時は予約が多く入っていたので見送っていた本。したがって、ちょっと時期を逸した観があります。
本書は、今や経済小説の一翼を担うようになった幸田さんの、その契機となった作品。これまで私が読んだ経済小説の代表格というと、米国ではアーサー・ヘイリー、日本では高杉良さん。この2人はベテラン作家だけあって、読み始めてすぐ登場人物、ストーリィの厚みを感じ、描かれる世界への興味で引き込まれる感じがあったのですが、本作品はそれに比較すると薄いという印象。しかし、それは作家としての経歴差もあるのですから、仕方ない面はあるにしろ、ちょっと物足りなさを感じるのも事実です。

ストーリィは、日本国債の大量発行、雪だるま式に借金が増え続けており経営不振国家と言われても当然という、日本の財政状況を題材にしたもの。それに加えて、ホームページ、チャットという現代ならではの通信手段を重要キーとしたところが、如何にも現代の経済小説というところでしょう。
あまりの国債大量発行状況について、経済に知識をもっている人であれば、いつまで安定消化ができるのか、引受シンジケート団手法への批判は、既知のことだと思います。その意味で、ストーリィとしてはそれ程驚くようなことではありませんが、幸田さんの経験を生かして国債トレーダーの内幕が描かれるところに現実感があります。また、後半トレーダーたちの顔が見えてくる辺りで、人の温かさが感じられるのが好ましい。
総体としては、迫力に欠けるものの、まとまりと仕上がりの良い作品。ストーリィはかなりオーソドックスです。

 


   

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