小手鞠
(こでまり)るい作品のページ No.3



21.ぶどう畑で見る夢は

22.炎の来歴

23.瞳のなかの幸福


それでも元気な私、欲しいのはあなただけ、エンキョリレンアイ、サンカクカンケイ、レンアイケッコン、好きだからこそ、ルウとリンデン-旅とおるすばん、別れのあと、時を刻む砂の最後のひとつぶ

 → 小手鞠るい作品のページ No.1


ラブ・ストーリーを探しに、望月青果店、心の森、空中都市、お菓子の本の旅、美しい心臓、ラブ・オールウェイズ、素足の季節、あんずの木の下で、テルアビブの犬

 → 小手鞠るい作品のページ No.2

     


                 

21.
「ぶどう畑で見る夢は-こころみ学園の子どもたち- ★★


ぶどう畑で見る夢は

2018年04月
原書房刊

(1300円+税)



2018/04/29



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1969年に誕生したという栃木県足利市にある「知的障害者のための入所更生施設」=“こころみ学園”
本書は、山で一番長生きというぶどうの木を語り手にして、こころみ学園で暮らす
「子どもたち」の1年を物語風に紹介した一冊です。

施設と言っても、実態は畑からとれたぶどうでワインを作る
“ココ・ファーム・ワイナリー”の施設あり、レストランやギフトショップあり、皆が暮らす宿舎もありといった、ぶとう、そしてワインを作るための場所。
また「子どもたち」といっても年齢は、10歳代から90歳代までと極めて幅広い。

春から冬までを語るという中で、創立者である故・
川田昇さんという人が抱いた思い、創立当時の苦労、個性的な子どもたちの様子が語られていきます。

障害児といって特別扱いするのではなく、彼らもまた一生懸命働ける仕事を持ち、その仕事から喜びを得られる、ということがどれだけ大切なことかと、深く感じます。
ただ、一般社会に入って一般の人と一緒にやっていくということは、やはり難しいことなのでしょう。
その意味で、こうした施設があるのはどれだけ大切なことか、と思います。

また、米国社会と比較すると、日本ではまだまだ特別視される、バリアフリーが十分ではないと指摘されている部分は、耳が痛いこと。
その面で日本社会が成長していくためには、事実そこにある実態を広く知ることがまず必要ではないでしょうか。
そのために、一助となる一冊。
読後感は爽やかです。
 
プロローグ こんにちは/1.春の手のひら/2.夏のかおり/3.秋の笑顔/4.冬のこもり顔/こころみ学園とココ・ファーム・ワイナリーのあゆみ

                  

22.
「炎の来歴 Two Lives Inflamed ★★


炎の来歴

2018年05月
新潮社刊

(1700円+税)



2018/06/14



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戦後のごたごたの中、貧しい家庭に育った主人公と、海を越えた米国人女性との14年間にわたる手紙での交流。
それは2人の間を電流の如く、平和と愛への欲求によって繫ぐものだった・・・。
小手鞠るいさんというと、魂を揺さぶるような恋愛小説の書き手という印象が強いのですが、本作はそれに“平和”への強い思いを重ねた力作長編。

偶然から生まれた、主人公の
北川と米国人女性レナータ・ヴァイスとの文通。彼女の依頼に応じて、主人公は戦争を記録した書物を紹介すると共に手紙に乗せて自分の想いを彼女に届けようとします。文通が続くに連れ、ますます彼女に対する恋慕の情は高まっていく。

しかし、朝鮮戦争後、再び米国が関わったヴェトナム戦争。平和を祈ることは無駄なのか・・・。彼女は決意の行動をし、そして主人公は彼女の願いを受け継ごうとして米軍の空爆にさらされる北ヴェトナムへ調査団の一員として向かう・・・。

恋情を描く部分は、如何にも小手鞠さんらしさが弾けています。
一方、北ヴェトナムで主人公が目にする、北側が見せようとした北爆被害者、そして見せようとしなかった犠牲者らの姿は、実にリアルで胸を揺さぶられずにはいられません。

ヴェトナム戦争後も、イラク、そして現在のシリアと、愚かにも戦争は繰り返されて止むことがありません。
それは、近代戦争において自国が戦場となる経験をしていない米国が主導で行われているからなのでしょうか。
そして“平和”とは、所詮ユートピア、夢ごとに過ぎないのでしょうか。
人間はもっと叡智を尽くさなくてはいけないのではないか、つくづくそう感じます。
本作は、祈りにも似た強い願いをメッセージの如く伝えようとする長編ストーリィ。


1.手紙/2.「平和」/3.写真/4.結婚/5.使者/6.戦場/7.生者/8.山

               

23.
「瞳のなかの幸福 ★★


瞳のなかの幸福

2019年02月
文芸春秋刊

(1700円+税)



2019/03/15



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主人公の滝野妃斗美は現在35歳、独身、一人暮らしにてショッピング雑誌の副編集長。
7年前、大学時代から付き合い出し、一緒に暮らしていた彼氏から突然別れを告げられ、そのまま現在に至るまで恋人なし。

仕事は充実しているし、人から羨まれるファッショナブルな賃貸マンションに住んでいるが、成田山新勝寺近くでうなぎ専門店を営んでいる実家に帰ると、父親から店を継ぎ既に2児の父親となっている弟からは、うかうかしていると売れ残りという遠慮ない暴言を浴びせられる身。

そんな妃斗美に転機が訪れたのは、衝動的に決断し、気に入った一軒家を購入したことから。
さらなる運命的な出会いとは、小さな捨て猫との出会い。
雷(ライ)ちゃんと名付けたその猫にまるで奉仕するような日々、それが妃斗美にこれまで知らなかった幸福感をもたらすとは。

私自身は、実家でも、現在も、ペットを飼った経験がないので何とも言えませんが、それでも妃斗美のワクワクと酔いしれるような幸福感、リアルに共感できるなぁという感じ。
しかし、終盤、幸福とは突然降ってわいてくるように手に入れるものであると同時に、簡単に手から抜け落ちてしまうものでもあるという真理、納得できると共に切ないなぁと感じる次第。

自分もまだ愛することができるのだ、ということを妃斗美が見出し、その後に続く最後の場面、好きだなぁ。
改めて人の幸せとは、他人から枠に嵌められるようなものではないし、人それぞれに違うもの、と思います。
しかし、愛するものが存在してこそ、というのは共通する点かもしれませんね。

読了後は、妃斗美と一緒に、幸せを手に入れたような気持ちになります。


1.自分を探す/2.夢を売る/3.大きな買い物/4.小さな拾い物/5.イエネコ・イエオンナ/6.愛を飼う/7.愛を知る

      

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