カツセマサヒコ
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1986年生、東京都出身。大学卒業後一般企業への就職を経て、趣味で書いていたブログを機に編集・ライターに転職。2020年「明け方の若者たち」にて小説家デビュー。同作は北村匠海主演にて即時映画化。

  


       

「ブルーマリッジ Break away(from the past) ★★☆   


ブルーマリッジ

2024年06月
新潮社

(1600円+税)



2024/07/27



amazon.co.jp

冒頭、主人公の雨宮守(26歳)は、交際6年・同棲2年である3歳年上の恋人=にプロポーズ、応諾を得ます。
もう一方の主人公は、同じ会社で営業部の課長である
土方剛。娘の結婚式を終えた翌々日、突然妻から離婚を求められます。

冒頭の展開と「ブルーマリッジ」という題名から、2組の結婚を対照的に描いたストーリーと思われる処。でもそれはひとつの舞台に過ぎず、主軸は“ハラスメント”、それも加害側。

ともかくも本作、テンポがいい。また、ストーリー展開の切れ味も極めてよく、トントンと読み進んでいけます。

中年サラリーマンである土方の、部下への、特に女性社員への傍若無人ぶりは、今の時代どう考えてもハラスメントであることは明らか。しかし、前時代的なやり方を未だに正しいと信じている土方の発想はもう呆れかえるばかりです。
その土方のハラスメントに対処することになるのが、人事部部員である雨宮という次第。
しかし、その雨宮もまた、過去の行動について翠から、加害者だったと非難されることになろうとは・・・。

いつ何時、ふとしたことで加害者側になってしまうことがあるのかもしれないと思うと、怖くなります。
それだけに、決して他人事ではないと気を引き締めていることが必要なのでしょう。
そして万が一、そうした行為をしてしまった時には、素直にそれを認めその対処を考える、しかないのだろうと思います。
そうした警告の書、に本作はなっています。


1.雨宮守のプロポーズ/2.土方剛と離婚届/3.外食が駄目ならちょっちいい肉を買って帰ろう/4.喫煙所にて/5.会議室にて/6.雨と沸点/7.ペットショップとドッグラン/8.声/9.涙は静かに言葉を越えて/10.揺るがぬ事実に心は揺れる/11.そして日常は落下する/12.NR/13.未調理の過去が並ぶ食卓/14.中年、娘に会いに行く/15.おとこたちはこれから/16.雑草とエプロン/17.七月の庭園/18.別離/19.告白/エピローグ

           


  

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