主人公=なるみの幼い頃に両親は離婚。父親とはずっと会わないままでしたが、悩んだりした時はいつも父親に手紙で相談をしていた。そして父親はいつも適格な返事をくれていた。
そんななるみは現在、夫と破局寸前。しかし相談できるただ一人の相手である父親は死んでもういない。
思い立ったなるみは、父親が住んでいた虎立温泉郷を訪ねます。そこで父親が旅館を営んでいたとはまるで知らなかったこと。しかもその“ひかげ旅館”たるや・・・・。さらになるみは、まるで知らなかった父親の実像も知ることになるのですが・・・・。
そのひかげ旅館に住んでいたのは、無表情の料理人=天藤と、小学生のくせに時代劇言葉をしゃべる源五郎。
なるみは暫くひかげ旅館に滞在することにしますが、亡父を始めとして住む側も訳有りであれば、宿泊客も訳有りの人物ばかり。
一体父親は、何の為にこんな、まともな人間ならとても泊らないだろうマイナーな宿屋を営んでいたのか。
その答えをなるみが見つけた時、おのずと自分の選ぶべき道も見えてくる、というストーリィ。
最近は“自分の居場所探し”物語が多いのですが、本作品もまたその一つ。ただし、舞台が宿屋である以上、所詮は一時的な滞在場所に過ぎない、ということか。
ひかげ旅館の存在にどんな意味があるのか。なるみと一緒にその答えを探してみるのも、本作品の一興。
なお、なるみの父親、天藤、源五郎等々、異彩を放つ登場人物ばかりですが、そんな彼らの存在が読み手の気持ちをホッさせてくれるのも事実です。自分もここに居ていいのだと。
1.花の間/2.月の間/3.雪の間/4.星の間
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