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「隣のずこずこ」 ★★ 日本ファンタジーノベル大賞2017 |
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2020年12月
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舞台は、僻地の町「矢喜原」。 その町で言い伝えられてきたのが、<権三郎狸>のお話。 その権三郎狸が、若い美女の笹生あかりという女性と共に町に現れたと、同級生の菅原綾子が主人公である住谷はじめへ突然に連絡してきます。 中三の同級生たちと町で一軒しかない待田旅館を訪ねたはじめたちは、そこで改めてあかりと権三郎狸に出会います。 そして、伝説どおりのことが、あかりから町民たちに通告されます。 ・一ヶ月後、権三郎狸は破壊を始める。 ・建物は徹底的に破壊され、人間は呑み込まれ、跡には何も残らない。 ・自分たちが到着した五月一日時点でこの町にいた人は、全員権三郎狸に呑みこまれる。 うおっ、なんというファンタジーであることか! どこかユーモラスであれば、最後も明るい結末で終わりそうなところなのですが、本作はそんな展開にはなりません。 町民たちの反応が読み処。肉ばっかり食べ続けたり、突然キレたり、犯罪に走ったり・・・・と。 まさか、最後は本当に・・・と思いつつ読み進んだのですが、絶句させられたのは結末のもの凄さ! こんな結末って、狸に呑みこまれることより、もっと恐ろしいことではないだろうか!! ファンタジー小説であるにはあるのでしょうけれど、ファンタジー小説の殻を完全に破った作品、と言って過言ではありません。 興味を引かれたら、是非。 1.五月五日/2.伝説の狸、来襲/3.角材マン/4.ぼやけていく頭/5.燃え続ける空き家/6.私死ぬから/7.五月三十日 |