加治将一作品のページ


1948年北海道札幌市生、小説家・不動産投資家。78年より15年間、米国ロスアンゼルスにて不動産関係の仕事に従事。帰国後執筆開始。ベストセラーになった「企業再生屋が書いた借りたカネは返すな!」、評伝「アントニオ猪木の謎」等の著作あり。

  


 

●「借金狩り」● 

 


2005年1月
新潮社刊

(1600円+税)

 

2005/02/23

借金を払わないで済ませる方法を語った「借金消滅」、それに続く小説「借金狩り」がベストセラーとなった作家の岸谷真二は、滞在先のハワイで出版社の担当編集者から電話を受けて絶句します。なんと、岸谷の印税に対する差押命令が何社もの出版社に届いているという。
借りた覚えもない借金を理由に、そのうえ裁判すら行われていないというのに、何故差押が行われるのか?
その時から岸谷の必死のマネー防衛と、差押した相手方の探索活動が始まります。
もうひとつ並行する事件は、会社経営していた義父の根保証をしたために、1憶3千万円の保証債務を抱えてしまったサラリーマン・横山一家の話。両親とも自殺してしまったにもかかわらず、美容師の長女・あゆは未だ銀行からの返済督促を受けています。父親が岸谷の著書を熟読していたらしいとあゆが岸谷にアドバイスを求めてきたことから、2つの事件が交錯します。

法律の抜け穴をくぐっての狡猾な金融犯罪、それに対して法律を駆使しての迫真の攻防、というストーリィを期待して読んだのですが、その点については期待外れ。法律的な攻防は、いかに差押の効力を無効にするかに留まると言っていい。
また、緊迫性が薄いのは、被害者側の余りの無防備さと、現実離れした部分にあります。限定相続や根保証の否認という方法を知らなかったというのは幾らなんでもと思いますし、あゆに返済を迫る銀行員像は相当に戯画的。
また、ストーリィが展開していくにつれ露になっていく敵側のあくどいやり方は、かなり粗い犯罪手法という印象を受けます。
ただ、巧妙かつ組織的な金融犯罪が増大しつつある現代の日本社会において、自分で自分を守るという意識の下に注意を怠らないという姿勢は不可欠でしょう。その点についての警鐘を鳴らす作品ではあると思います。
サスペンスとしてはもの足りない、かなり軽めのサスペンス。ただし、金融犯罪の手口を小説化したという点では面白く読めました。

 


  

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