海堂 尊
(かいどうたける)作品のページ


1961年千葉県生、勤務医。2005年「チーム・バチスタの栄光」にて第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。

  


 

●「チーム・バチスタの栄光」● ★☆  「このミステリーがすごい!」大賞




2006年02月
宝島社刊

(1600円+税)

2007年11月
宝島社文庫化
(上下)

 

2008/05/09

 

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成功率6割というリスクの高い心臓手術=「左心室縮小形成術」俗称「バチスタ手術」と言われるその難しい手術に見事な実績を残しているのが、東城大学医学部付属病院の桐生恭一助教授が率いる通称“チーム・バチスタ”
ところが、成功し続けてきたそのバチスタ手術で、最近三例立て続けに患者が術中死するという事態が生じた。
手術失敗の裏に何かあるのか?、神経内科教室の万年講師で「不定愁訴外来」(要は患者の愚痴聞き役)を担当している田口公平は、突然高階病院長から内部調査の指示を受けます。
そして、真相究明が田口の手に余ると見られるや現れたのが、厚生労働省の変わり者エリート官僚、白鳥圭輔

さしずめ田口医師はワトソン、白鳥技官がホームズといった配役だでしょうか。ただそのホームズ、天才的なひらめきと洞察力はホームズ並と言えるけれども、人を人と思わぬような傍若無人ぶり、人を煙に巻いて平然としている風と、相当に個性的なキャラクター。本作品の面白さは、その厚労省役人=白鳥の言動にあると言っても良いでしょう。
その白鳥の部分を取り除いてしまうと何が残るのか。一番重要な部分について白鳥は最初から事実を把握していたし、そうなると事件の真相は限られるのですが、その動機といえば飛躍し過ぎ、という観があります。
本作品に対する評価は、鍵を握るキャラクター=白鳥圭輔を是とするか非とするか次第だと思いますが、私としては余りに創り上げ過ぎている感じがしてどうもなぁ・・・。

なお、本書にはミステリ要素以外に、病院の医療体制の在り方、中立的な立場でのリスクチェック機関の必要性、というメッセージも篭められています。
ただ、登場人物のキャラクターと、ミステリと、現代医療に対する警告、という3要素がもうひとつまとまりきらず、バラバラに在るという印象。
本書の刊行時、読もうかどうしようか迷って結局読むのを見送った経緯があるのですが、実際に読んでみてその時の直感どおりだった、という思いです。
比べてしまうのは失礼ですが、帚木蓬生「臓器農場アーサー・ヘイリー「最後の診断」の方がもっとドラマがあって、感じるところも大きかったように思います。

 


  

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