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●「ぼっけえ、きょうてえ」● ★★ |
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2002年7月
2006/05/07 |
怖い話4篇を収録した短篇集ですが、群を抜いて面白いのはやはり、第6回日本ホラー小説大賞を受賞した「ぼっけえ、きょうてえ」。 表題は、岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味だそうです。 ではとても怖い話なのかというと、内容はともあれ、怖さより可笑しさ、面白さの方を感じてしまうのです。その辺りがとても味わい深い。 ストーリィは、娼婦が客に寝物語に語るという形で繰り広げられていきます。その内容は、「妾(わたし)」の身の上のこと、自殺した朋輩の娼婦のこと。 おどろおどろしい話かと身構えてしまいそうになると、妾はまるで冗談ごとのようにかわしてしまう。方言で語られるからこそ、陰惨ばかりでない笑いが生じてくるのです。 語られるからこその面白さがここには感じられます。“怖い話”とは、何と語られるにふさわしい物語なのでしょうか。まして、それが方言で語られるのです。ついつい引きこまれてしまう。 陰惨ながら笑いがこぼれてしまう、本篇の面白さはそこに尽きます。 怖ろしいという意味では、次の「密告函」の方が怖ろしい。評判の良い女子こそその奥底には陰湿なものを秘めているという、典型的なストーリィでもありますが、端整なところが印象的。 ぼっけえ、きょうてえ/密告函/あまぞわい/依って件の如し |