岩井志麻子作品のページ


1964年岡山県和気郡和気町生、岡山県立和気閑谷高校卒。高校在学中の82年第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。86年「夢みるうさぎとポリスボーイ」で本名の竹内志麻子名義にて少女小説家としてデビュー。88年に結婚し、岩井姓(その後離婚)。「ぼっけえ、きょうてえ」にて99年第6回日本ホラー小説大賞、2000年第13回山本周五郎賞、02年「trai cay (チャイ・コイ)」にて第2回婦人公論文芸賞、「自由恋愛」にて第9回島清恋愛文学賞を受賞。

 


   

●「ぼっけえ、きょうてえ」● ★★




1999年10月
角川書店刊
(1400円+税)

2002年7月
角川文庫化

 

2006/05/07

怖い話4篇を収録した短篇集ですが、群を抜いて面白いのはやはり、第6回日本ホラー小説大賞を受賞した「ぼっけえ、きょうてえ」
表題は、岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味だそうです。
ではとても怖い話なのかというと、内容はともあれ、怖さより可笑しさ、面白さの方を感じてしまうのです。その辺りがとても味わい深い。
ストーリィは、娼婦が客に寝物語に語るという形で繰り広げられていきます。その内容は、「妾(わたし)」の身の上のこと、自殺した朋輩の娼婦のこと。
おどろおどろしい話かと身構えてしまいそうになると、妾はまるで冗談ごとのようにかわしてしまう。方言で語られるからこそ、陰惨ばかりでない笑いが生じてくるのです。
語られるからこその面白さがここには感じられます。“怖い話”とは、何と語られるにふさわしい物語なのでしょうか。まして、それが方言で語られるのです。ついつい引きこまれてしまう。
陰惨ながら笑いがこぼれてしまう、本篇の面白さはそこに尽きます。

怖ろしいという意味では、次の「密告函」の方が怖ろしい。評判の良い女子こそその奥底には陰湿なものを秘めているという、典型的なストーリィでもありますが、端整なところが印象的。
残る「あまぞわい」「依って件の如し」は、ストーリィがちょっと判りにくいところもあって前の2篇に比べると迫力不足。

ぼっけえ、きょうてえ/密告函/あまぞわい/依って件の如し

 


   

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