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「百年泥」 ★★ 新潮新人賞・芥川賞 | |
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騙されて多重債務を負わされてしまった主人公、取立屋らから逃げ出すように、元夫が紹介してくれたインドでの日本語教師の道に飛びつきます。 そしてチェンナイ生活3ヶ月半にして遭遇したのは、百年に一度という大洪水。 水が引けた後に残ったのは、夥しい泥。 その百年泥の中から住民たちが引きずりだしたものは、その間に死んだり行方不明になっていたりした友人や家族・・・・。 百年泥、それは混沌そのものと言って良いでしょう。 現地の人々の摩訶不思議な過去が引きずり出されるだけでなく、主人公の日本時代の回想、そして泥の中から見つかった大阪万博のメモリアルコインがある物語を語り出す・・・。 現実と非現実が巧妙に組み合わされたストーリィ。 混沌というと、とかく訳の分からぬ重さを感じてしまうのですが、本作はそこがカラッとしていてすんなり読んでいけるところが楽しい。 それは主人公において、自分に自信がなく、この世界で底に位置していて皆を見上げるようにして見ている所為なのかもしれません。 石井さん自身のインド・チャンナイでの生活が、きっと本作品の養分になっているのだろうと思います。 |