太宰治賞受賞作と聞いてずっと気になっていた作品。
偶々借りられたので読んでみるに至った次第です。
主人公は18歳の小娘コン。兄が国外で失踪したことから兄嫁に強引に引っ張り出され、探し出すために一緒に渡航。
しかし、兄嫁と袂を分かった後、安宿で騙され所持金を全額を失う羽目に遭います。現地のジェシカという娘に案内されその実家に居候、誤解されるまま男の子として怪しげな貿易会社「マソン商会」で働き始めます。
そのマソン商会で再会したのが、コンと因縁があるとしか言えない“先輩”のアンジ。アンジを恋したコン、やがて・・・。
それだけ聞くと、異国情緒に満ちた恋愛譚と思えるのですが、いやはやとんでもない。幾ら何でもそれはないだろう、という展開が次々と待ち受けています。もはや恋は盲目と言うより、恋は“盲走”、妄想の域か。
ここまで来ると本作品、異国での妄想世界における冒険恋愛譚と言うべきか。なにやら現代アジア版アラビアンナイトを見ているような気がしてきます。
決して楽しくはなく、むしろ厭わしく思えるくらいの恋愛譚なのですが、そうした恋愛譚を作り上げたことが凄い、と思えるような作品です。
コンとアンジ/蟹牢のはなし
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