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3.尻尾と心臓 |
「青猫家族輾転録」 ★★ |
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2006/08/22
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主人公は51歳、たまたま私と同年齢です。 39歳で死んだ叔父との思い出が語られる一方で、自分を裏切った友人が癌で余命少ないことを知る、高校から私立に入った娘が学校に馴染めず不良化してしまったかと心配していたら妊娠、さらに提携先から吸収合併か提携解消かの選択を迫られる、といろいろな問題が主人公の前に立ち塞がります。 主人公は51歳になって0歳という末子を抱え込むことになりますが、それは20年かかってやっと住宅ローン完済間近になったというのに再び新たな住宅ローンを抱え込もうとしている私に、子供とローンの違いこそあれ、似たものを感じます。 |
「愛と癒しと殺人に欠けた小説集」 ★★ |
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「愛と癒しと殺人に欠けた小説集」、なんとユニークで、皮肉った題名であることか。この題名こそ、読んでみようかと興味を惹かれた理由です。 冒頭の「ヌード・マン」は、本書中もっとも小説らしい小説。全裸で外を歩き回るという誘惑を、こらえようとしてもこらえられない会社員の話。これに比べればまだ痴漢の方が同じ醜態としてもマシかもしれない。主人公にとって一番のストレス発散策、捕まったらとんでもないことになると自覚していながらどうしても止められないという衝動。読み手もつい主人公以上にハラハラドキドキさせられてしまう、というところが本作品の曲者たるところです。最後はなんと!という結末。 初出誌に関する記述を含む前書き/ヌード・マン/掌/ローマの犬/スキーに行こう/微笑む女/えりの恋人 |
3. | |
「尻尾と心臓」 ★★ |
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片や新システムの開発・事業化の役目を負わされて九州の食品問屋・商社「柿谷忠実堂」から東京の子会社「カキヤ」に出向させられ、事業開発室勤務を命じられた乾紀実彦。片や第三者ではなく自ら当事者になりたいと経営コンサルタントから転身して柿谷忠実堂の子会社「インナー・パスポート社」に入社、新システム開発の責任者とされた笹島彩夏。 見た目は、外部への販売を目論む新システム<セルアシ>の開発をめぐるお仕事小説ですが、それは本ストーリィの背景となる事柄に過ぎません。 同じ会社勤めとはいえその経歴において対照的な男女2人の会社員=乾、笹島を並列的な主人公とし、その2人の視点から仕事、会社、家族といった関わりを描いた長編小説。 本ストーリィは決して<セルアシ>開発計画の成否や、舞台となる「カキヤ」社風の是非を問うたものではありません。 仕事とは、会社とは一体どのようなものであるのかを、現実的に描いた作品。 その点において「カキヤ」という会社がかなり異色。子会社とはいえ、独裁者的な社長が采配を揮う、極めて独立姿勢の強い会社なのですから。 ついつい、自分の歩んできた会社員生活と比べていました。 |