五十嵐律人
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1990年岩手県生、東北大学法学部卒。司法試験合格。2020年「法廷遊戯」にて第62回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。


1.法廷遊戯

2.六法推理

  


       

1.

「法廷遊戯 ★☆          メフィスト賞


法廷遊戯

2020年07月
講談社

(1600円+税)

2023年04月
講談社文庫



2020/08/05



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主人公は、評価の余り高くない法都大ロースクールの学生で司法試験合格を目指す久我清義
第一部では、ロースクールの学生たちの間で、模擬裁判というべき
“無辜ゲーム”が行われていた。裁判長に相当する“審判役”は結城馨。誰もがそれを受け入れていたのは、彼が既に司法試験に合格している優秀な学生であったから。
一方、清義と並んで優秀な学生と評価されている
織本美鈴がストーカー被害?に遭い、その解決に清義が尽力する経緯が描かれます。
そして第二部では、司法試験に合格、司法修習を終えて弁護士となった清義が、何と○○を殺害した罪で逮捕された美鈴の弁護を引き受けることになり奮闘する、というストーリィ。

実は清義と美鈴、同じ児童養護施設の出身。そして2人には、苦境を一緒に乗り越えてきた、ある秘密があった。
事件はそのことと関係があるのか? そして、美鈴は本当に殺人を犯したのか?

模擬法廷(ゲーム)〜実際の法廷(被告人は織本美鈴)を通じて描く、法廷ミステリ。
局面は一転二転、そしてその都度、清義と美鈴が過去に犯した罪が露わになっていくという展開へ。

有罪か無罪か。そして冤罪か。
本作は迫真の法廷ミステリと言えるのかもしれません。しかし、私としては実際の法廷場面も、(法廷)ゲームの延長に過ぎないように感じられます。
それは何故かというと、清義と美鈴の人間ドラマを描くにまで至っていないため。
また、馨、美鈴、清義それぞれが抱えていた秘密も、結局は登場人物間に仕掛けられた謎というより、読者に対して仕掛けられた謎かけという印象が強い。
そのため、何となく物足りなさが残りました。

第1部 無辜ゲーム/第2部 法廷遊戯

       

2.

「六法推理 ★☆   


六法推理

2022年04月
角川書店

(1700円+税)



2022/05/18



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霞大学の片隅にある自主ゼミ=「無料法律相談所」(通称:「無法律」)。そこに持ち込まれる謎、揉め事等々を解決していく連作ストーリィ。

50年の歴史を誇る無法律ですが、自らが招いた揉め事により、現在の実動部員は法学部4年の
古城行成ただ一人。
その無法律に、謎を解決してほしいと突然飛び込んできたのが、経済学部3年の
戸賀夏倫
その事件をきっかけに、勝手に助手を自称する夏倫に引きずられるようにして行成、次々と謎、揉め事に向かい合うこととなります。
という訳で、一応は“連作ミステリ”。

出版社紹介文から、法律を軸とした連作ストーリィかと思っていたのですが、法律は入り口に過ぎず、結局はミステリの展開。
しかし、その構成・展開がもう一つスッキリせず。
特に冒頭の
「六法推理」、相当に無理筋と感じざるを得ない真相でした、幾らなんでも。
もうひとつ残念だったのは、登場人物に余り魅力を感じられなかったこと。
主人公の古城行成、彼と凸凹コンビになる戸賀夏倫ともそれなりに個性的ではあるのですが、うまく絡み合っていないという印象を拭えず。

※なお、古城行成、この先自分はどうしたいのか、全く分からないという厄介な人物。
「幕間」は、裁判官である父親、弁護士である母親、検事になった兄とのエピソードを綴った掌篇です。

六法推理/幕間−法曹一家/情報刺青/幕間−誰彼味方/安楽椅子弁護/幕間−秋霜激烈/親子不知/幕間−陽炎天秤/卒業事変

    


  

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